アンダルシア 真保祐一


2012.1.31  外交官特権をフル活用 【アンダルシア】

                     
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■ヒトコト感想

外交官黒田シリーズ。捜査権を持たない黒田が、どのようにして事件を解決していくのか。今回はスペイン、フランス、アンドラと3ヶ国の警察を相手にするため、外交官としての特権がかなりポイントとなっている。日本であれば、あっさりと警察に追い払われるところ、海外で日本人が関わる事件での付き添い外交官であれば、相手も邪険には扱えない。そんな特別な立場という優位もあれば、捜査権がないという不利な部分は最後までつきまとう。一人の女性をめぐり3ヶ国の警察が右往左往する。ある意味黒田も翻弄さているが、日本人を守ろうとする黒田の徹底した考え方というのが、物語を通して伝わってくる。映画は見ていないが、本作との違いが気になるところだ。

■ストーリー

ヨーロッパの小国・アンドラで殺人事件発生。外務省邦人保護担当の黒田は、アンドラからのSOSを受けてスペイン・バルセロナから現地に向かい、一人の日本人女性と出会う。彼女は何者なのか。ふくれあがる疑念とともに、黒田にも危険が迫る。外交官は、どこまで捜査にかかわれるのか。自身のアイデンティティまで問われかねないぎりぎりの状況を切り開いていく黒田だが、そこには巧妙な罠が張り巡らされていた。

■感想
相変わらず外交官としての黒田のキャラはすばらしい。アマルフィと比べるとアクションは少ないが、その分、外交官として他国の関係者との駆け引きが重点的に描かれている。特に今回は、スペイン、フランス、アンドラという3ヶ国の警察と、一人の日本人女性を守るために対決するような図式となる。黒田が外交官特権をちらつかせると、相手は及び腰になる。今までの作品にはない、警察組織が手出しを躊躇するという流れが、なんだか非常に新鮮に感じた。ただ、皮肉にも黒田が必ず正しいというわけではないので、それが裏目にでるのが本作かもしれない。

黒田が一人の日本人女性からのSOSを受けることから始まる本作。3国をまたにかける物語なので、ダイナミックさはある。ただ、事件自体は非常にこじんまりとしており、細かく重箱の隅をつつくようなことが繰り返される。一つの物語として、すんなり行けばすんなりと解決するはずの物語が、ある日本人女性に翻弄されたために、事件は複雑になっていく。黒田がすばらしく紳士的で能力の高さを示せば示すほど、これはアマルフィのときにも感じたことだが、守るべき女性の身勝手さのようなものばかりが心にひっかかってしまう。

ラストにはいくつかのどんでん返しがある。他国の警察たちとのひりつくような駆け引きを繰り返してきた黒田であっても、すべてのオチがわかるとぐったり疲れるような展開だ。ラスト間際では、いかにも正当性があるように言い訳めいた理由が長々と語られている。ただ、それにすんなり納得できるはずもなく、どうにかして犯人の印象をよくしようとしているようだが、逆効果だ。読み終わった感覚としては、黒田の苦労はなんだったのか、という気持ちばかりが心の奥底にこびりついて離れない。

黒田の外交官としての駆け引きに、他国の警察たちがひるむシーンはすばらしい。



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