アマルフィ 真保祐一


2011.4.8  映画との違いを探してしまう 【アマルフィ】

                     
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■ヒトコト感想

どうしても映画との違い探しをしてしまう。外交官というキャラクタでいえば、本作の方が優れている。映画ではいつもの織田裕二が暴れ回るという印象しかないが、本作では型にはまらない外交官というイメージと、外交官の業務的側面も感じることができたのは良かった。オチや重要なキャラクタが映画とは違っているが、本作は本作の良さがある。日本人誘拐事件に対する外交官のスタンスや、特殊な職業としての特徴がよくあらわれている。クライマックスへ向かう壮大な仕掛けと、犯人グループの目的などは多少強引過ぎるように感じられたが、事件の大規模さは十分伝わってきた。この黒田というキャラは、その後短編で登場するようだが、すばらしいシリーズとして展開できる優秀なキャラのような気がした。

■ストーリー

海外の邦人保護―外交官・黒田康作に与えられた特別任務だ。テロ情報をもとに、黒田はローマへと派遣される。在イタリア日本大使館では、不審火が発生。さらに日本人少女が誘拐される。広がりを見せる事件。姿を見せない犯人。翻弄されるイタリア警察。黒田は少女を救出すべくアマルフィの地へと向かう。そこでは驚くべき犯人たちの計画の全貌が。

■感想
映画を先に見ているので、どうしても比較から入ってしまう。映画は主人公である黒田が外交官というより、いつものヒーロー織田裕二としか見えなかったので、新鮮さはない。それに比べると本作は、外交官というのが前面に押し出されており、外交官ならでわの思考や様々な制約など興味を惹かれる部分が多々あった。クライマックスと犯人グループの目的が、映画とはかなり違っていたが、それらは映画の方がドラマチックだった気がした。本作も悪くはないが、唐突で誘拐事件と綿密な繋がりがあるように思えなかった。そのあたり、かなりしつこくフォローされてはいるが、目的のための手段としては、あまりにリスクがありすぎるような気がした。

黒田というキャラがすばらしい。組織では、はみだしモノであっても、その実力と自分の信念を貫いて行動する実行力はカッコイイ。そして、外交官としての素質など。外交官がどういった業務をし、何を目的として存在しているのかが良く分かった。特に新人外交官に対する思いなど、単純な一匹狼ではなく、周りをうまく使おうとする臨機応変さもすばらしい。娘を誘拐された母親が、映画と同様、あまり好感をもてなかったので、どうしても相対的に黒田の魅力ばかりが際立ってしまう。映画ではさらにすばらしいキャラが存在したが、本作ではハーディングが代わりをしている。重要な役割だがあまりインパクトはない。

社会情勢を反映させた作品といえるだろう。映画は広く浅くということで、よりわかりやすい展開になっている。映画と比べると、どうしてもクライマックスへ繋がる部分が弱く感じてしまう。それなりにスジが通っているように説明されてはいるが、飛躍しているように感じてならなかった。イタリアという土地がどれだけセキュリティ意識が高いのかわからないが、目的を達成するために、犯人グループが誘拐事件を起こしたというのは、どうにも納得できなかった。

映画より先に読んでいれば、外交官という新しいキャラクターをもっと楽しめたことだろう。



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