GOSICKs3  


 2012.4.12   エピローグで予告 【GOSICKs3】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

シリーズ3作目の短編集。今回はGOSICK6後の世界となる。今までの短編集では、キャラクターたちの出会いのきっかけや、脇役たちのちょっとしたエピソードなどが語られていた。本作では、ヴィクトリカに久城が書物の物語を朗読し、物語上の秘密をヴィクトリカが鮮やかに解き明かすという流れだ。そのため、どちらかといえば書物の物語の印象が強い。物語のテーマがマンドラゴラやヨーロッパの伝説など、奇妙な雰囲気をだしており、いつものシリーズとはまた違った雰囲気を楽しめる。さらに、本作で重要なのは、アブリルの物語とその後のエピローグだ。これだけは、その後のシリーズに影響しそうな要素が多数ある。

■ストーリー

少年は、迷いの中にあった。一度は、救い出すことができた。奪い去られてしまった姫を。暗黒の要塞から。それからしばらく後―。どうすれば、彼女を護りつづけることができるのだろう。そう思いながら、東洋からやってきた少年久城一弥は、迷路花壇の中を走る。姫―ヴィクトリカに会うために。今日も、彼女を退屈させることのない、謎を抱えて。二人きりで語り合うために。高原の秋の訪れは、早く、彩るように山々を染める。二人は語り合う、かつて自分たちと同じように歴史のうねりにのみ込まれ、挫けずに闘った人々たちの思い出を。

■感想
短編シリーズとして、もしかしたらネタ切れしたのだろうか。今回は、久城が物語を読み、それに対してヴィクトリカが何らかの謎を解くという流れだ。それぞれの物語は、久城がヴィクトリカを退屈させまいとして、図書館から選んできた物語だ。白い薔薇、紫のチューリップ、そして黒いマンドラゴラなど、すべてが色と植物に関係したタイトルとなり、物語はミステリアスで少し悲しい雰囲気をだしている。物語を久城が朗読し終わると、突然ヴィクトリカが突拍子もないことを口にする。それは誰も特に疑問に思わないことを、ヴィクトリカが勝手に解決してしまう。

本作の中で、「花びらと梟」だけが趣向が変わっている。ヴィクトリカと久城が主役の今までの短編と違い、アブリルが主役となる。そこでアブリルが語る物語を、ヴィクトリカと思われる人物がサラリと解決してしまうのだが…。ここではっきりとは名言されないが、コルデリアが登場する。シリーズの肝とも言える人物の登場で、物語は盛り上がるのだが、その後のエピローグでさらに盛り上がりは最高潮に達することになる。ヴィクトリカの母親であるコルデリアが、どのような役割を果たすのか、だんだんとヴィクトリカと久城に食い込んで来そうな雰囲気がある。

いつもどおり、短編集は本編にはほとんど影響がないものと思っていたが、エピローグを読むと、かなり重要な気がしてならない。なにやら怪しげな言葉や、GOSICK4で登場した過去の事件にまつわるなんらかの因縁の話など、予告的な雰囲気が強くなっている。この短編集を読まなければ、この予告部分を知らずに本編に突入することになる。それが良いのか悪いのかは、GOSICK7以降を読めばはっきりすることだろう。シリーズとして積み上げられた謎が、どのようにして解決されていくのか、気になるところだ。

安定したシリーズの強みというのが本作にはある。




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