GOSICK4  


 2012.2.24  興味深い錬金術師の謎 【GOSICK4】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

シリーズの中では比較的謎やミステリアスな部分に重点をおいている作品だ。ヴィクトリカと久城のツンデレ劇場に、新たなライバルが登場するなどキャラクターの個性はよりパワーアップしている。本作はそれらキャラクターよりも、謎の部分に強く興味をひかれた。特に錬金術師がどのようにして金を次々と生み出してきたのかということや、裁判でインチキだと決まったあとの衝撃的な行動など、今までにないミステリアスな雰囲気だ。シリーズの肝であるヴィクトリカの謎は、さらに進展している。何かを暗示させるような言葉も登場し、先の見えない展開となっている。シリーズをとおして一番中世ヨーロッパの雰囲気がでているように感じたのは自分だけだろうか。

■ストーリー

季節は初夏。今日も図書館塔最上階、秘密の小部屋で読書にふけるヴィクトリカの頭上に、金色の書物が落ちてきた。そこには“未来の汝よ。我は愚者なり。そして汝、愚者の代弁者となりて、我が愚かなりし秘密を暴け!”とメッセージが。時を同じくして学園にやってきた謎の人物。そして、時計塔で起きた密室殺人…知恵の泉のもと、すべての謎がひとつになるとき、王国の禁忌が白日のもとに

■感想
今までのシリーズにはないくらいの興味深い謎だ。錬金術師の伝説から始まり、その謎をヴィクトリカが解き明かそうとする。時計塔での密室殺人はさておき、錬金術師の回想形式の物語が、本作をより重厚でシリアスな雰囲気に仕立て上げている。錬金術師の正体とは何なのか。どのようにして金を生み出したのか。そして、植民地政策に入り込もうとした理由は…。謎が盛り上がりながら、そのオチがまったく想像つかないというのは、否が応でも興味をひかれてしまう。

シリーズの定番となったヴィクトリカと久城のやりとりに、今回からアブリルが加わることになる。これにより、アブリルまでもがヴィクトリカの存在を認識するので、この先は誰もが想像するような三角関係となるのだろう。二人の好意にまったく気付かない鈍感な久城という図式は、かんたんに思い描くことができる。ヴィクトリカの存在理由がおぼろげながら明らかとなり、若いころのヴィクトリカの父が錬金術師の物語に登場したりもする。シリーズの継続した謎と、新しい事件の組み合わせが絶妙だ。

シリーズの他の作品と比べると、謎が安易ではなく、読者を強く引き込むような仕掛けがある。錬金術師の行動が何を目的としているのか読めず、かぶった仮面のその下にはどんな顔があるのかも、常に継続した謎として頭の中に残ったまま読み進めることとなる。オチについても、ありがちなものではなく、よく練りこまれている。ただ、錬金術師関連のインパクトが強いため、肝心の密室殺人事件がほとんど印象に残らず終わったようなイメージしかない。大きな意味では関係があるのだろうが、事件の印象はうすい。

今までになく時代を感じさせる雰囲気だ。




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