GOSICK6  


 2012.4.5   仮面舞踏会的王道ミステリー 【GOSICK6】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

前回の「つづく」から本作へ物語りは繋がっていく。ベルゼブブの頭蓋からの帰り、豪華列車内で巻き起こる事件をヴィクトリカが鮮やかに解決していく。今回はミステリーの王道をいく流れだ。列車内でそれぞれが身分を偽り楽しげな会話を楽しむ中、突然殺人事件が起こる。誰がどのようにして事件を起こしたのか。最初から仕組まれたものなのか、それとも偶然なのか。身分を偽るということがまず一つの謎として存在し、その後どのようにして事件を起こしたのかが第二の謎となる。容疑者は誰もが怪しい雰囲気をかもし出し、ミステリーの王道的に警察の前でひとりひとりの事情聴取を行うなど、今までになくまっとうなミステリー風だ。

■ストーリー

謎の修道院“ベルゼブブの頭蓋”から辛くも脱出したヴィクトリカと一弥は、豪華列車オールド・マスカレード号で、一路懐かしいソヴュールへ。そこで出会った乗客たちは、それぞれ奇妙な名乗りを上げる。“死者”に“木こり”、“孤児”に“公妃”。やがて起こった殺人事件、三つの嘘とひとつの真実、いや、もしかしたら、すべてが…?誰もが誰かを演じる仮面舞踏会の夜、深まる混沌にヴィクトリカの推理が冴えわたる。

■感想
シリーズの醍醐味である、ヴィクトリカと久城のツンデレ劇場はひかえめだ。ただ、事件が発生したその場にヴィクトリカと久城がいることで、より事件に深く関わっている。なんでもすべてお見通し的な動きを見せるヴィクトリカと、事件の真相が想像つかない久城。読者は久城と同じ気持ちになり、いったい何を根拠として犯人をつきとめたのかと気になるだろう。事件の真相をあばくトリックとしては、まぁ特別な驚きはない。ミステリーらしい材料を使った、ごく普通のトリックかもしれない。

本作の醍醐味はなんといってもベルゼブブの頭蓋から引き継いだ”形見箱”の謎だろう。アカデミーとオカルト省が必死で探し出そうとする形見箱にはどんな秘密が隠されているのか。本作で、その秘密が明らかとなる。何かしら物語の根底を覆すような大きな秘密を期待していたのだが、そうではなかった。ただ形見箱の存在が、ある重要人物にとってはアキレス腱であるということだけは、はっきりしてきた。形見箱の正体がはっきりすると、あとはそれに踊らされた人々の後始末がまっている。

物語は身分を偽った”死者”と”木こり”と”孤児”に”公妃”が何か重大な秘密があるような流れとなる。なぜ偶然列車内で出合ったものたちが、身分を偽りながら会話を始めたのか。様々な伏線と、偽った身分に大きな意味があるという複雑さだ。何が真実で何が偽りなのか。身分を偽った者の中には、精神に異常をきたしたと思われる者まであり、誰の言葉が真実なのかすべてを煙にまいている。強烈なインパクトはないが、ミステリーの王道的流れと、シリーズの良さを凝縮したような物語だ。

定番ミステリーが好きな人にはおすすめだ。




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