2012.3.28 おまけの短編集 【GOSICKs2】
評価:3
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■ヒトコト感想
GOSICK5へと続く外伝的作品。学園の夏休みに起こった出来事が短編として描かれている。本作では必ずしも久城とヴィクトリカが主役というわけではない。中には久城とヴィクトリカのそれぞれの身内が主役として大活躍する物語もある。本編ではただの脇役でしかない寮母のゾフィやセシル先生が、実は二人は昔から知り合いだった、なんてことがわかる物語もある。GOSICKの世界を彩るすべてのキャラクターに、何かしらの印象付けをし、その後の世界を奥深いものにしようとしているのだろう。ほぼ本編とは関係ないことばかりが、本作には登場してくる。そのため、本作を読まなくても本編の内容にはまったく関係ない。ただ、読めばより楽しめるだろうという程度だ。
■ストーリー
少女は白いドレスを着て、緑の絨毯の上で待っていた。草いきれすらも、心地よい。会えるのだから。二人しか、ここには居ないのだから。そう、陶製の人形のような少女―ヴィクトリカは、今日も彼が来るのを待っている。少年・久城一弥が、かけてくるのを。芽吹いた緑たちが。噴水からこぼれおちる水の青が。そしてそれらを照らす陽の赤が。すべての色が輝きを増し、光に包まれ、命が生きようとする季節―夏。やがて訪れるであろう崩壊と、別離を前にした一瞬の平和―刹那。二人だけの学園にて、一弥とヴィクトリカは同じ時を生きる。世界を語る。謎を―混沌のむこうにある心を知る。そして、お互いを思う。ひと夏の間に重ねられる、淡い逢瀬の物語。
■感想
学園に夏休みがやってきた。久城はアブリルから地中海旅行を誘われるが、ヴィクトリカのことが気になり、学園に残ることになる。ここから始まる短編として、いつもどおり久城とヴィクトリカが中心となってすすむのだが、その他のキャラクターたちも大活躍する。ただ、事件のポイントとなる部分は、ヴィクトリカが解決するのだが、ある短編ではいっさい登場せず、電話ごしに指示するだけというパターンもある。ヴィクトリカの兄や、久城の姉など、二人の身内が事件に関わるというのが大きなポイントかもしれない。
本作の短編では、ヴィクトリカのお菓子好きがことさら強調されている。ケーキやアメが大好きで、それらが食べれないことによる怒りが、すべて久城へと向かうのはいつものパターンだ。長編ほどシリアスで緊迫した雰囲気はなく、すべてがどこかほのぼのとしている。アメやケーキがヴィクトリカの周りに集まり、さらにはホンワカとした雰囲気の久城がいるかぎり、血みどろの惨劇は似合わないだろう。セシルや寮母であるゾフィ二人の意外な関係など、本編にはほぼ関係ないが、おまけ的な要素は楽しくなる。
GOSICKシリーズのファンならば必ず読むべきだろう。ファンではなく長編を読みストーリーを追いかけたいだけの人は、本作を読まなくても問題ない。おまけ的要素が強く、本作を読まないからといって、長編でわからない部分があるなんてことはない。そのあたりは「GOSICKs」とは違うところだ。短編なのでサラリと読みやすく、普段脚光をあびないキャラクターたちが主役となるのは、シリーズのファンならば十分楽しめるだろう。
おまけ的要素の強い短編集だ。
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