GOSICKs  


 2012.3.6   GOSICKの世界をより深く 【GOSICKs】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

GOSICKシリーズの短編集。GOSICKの前を描いた短編のため、ヴィクトリカと久城の出会いや、アブリルやセシルなど主要キャラクターたちそれぞれの出会いが短編でシンプルに描かれている。本作を読まなければGOSICKを楽しめないかというと、そうではない。おまけ的な扱いで、読めば今後さらにGOSICKの世界が楽しめるだろうという程度だ。基本は長編シリーズを読めば物語を理解できるという作りになっている。長編には短編で登場した事件のキーワードが突然でてきたりと、短編を読んでいる読者を巻き込むような仕掛けがされている。そのため、GOSICKの世界をより楽しみたいのなら、本作は読むべきだろう。シンプルで引きが強く、サラリと終わるので気持ちよく読みすすめられる。

■ストーリー

1924年、春。ヨーロッパの小国ソヴュールに、極東から留学してきた久城一弥は孤独である。不慣れな環境、言葉の壁、クラスメイトの間で囁かれる不吉な言い伝え“春やってくる旅人が死をもたらす”…そして噂どおり起きてしまった殺人事件。容疑者として絶対絶命の危機に陥った一弥に気まぐれな救いの手をさしのべたのは、図書館塔に篭もる謎の少女だった―。

■感想
すでにGOSICKの世界ではおなじみとなったキャラクターたちが、どのようにして出会い、どんな関係を築いてきたかを描いている。おなじみのキャラクターたちの出会いは、実はあまり意識していなかったが、こんな出会いだったのか、という驚きはあまりない。ごくありふれた予想通りの出会いと言っていいだろう。ただ、そこには必ずなにかしらの事件があり、それをヴィクトリカが解決する。短編でも、この黄金パターンは変わらない。ありきたりかもしれないが、安心できる流れだ。

長編の中にはこの短編で起きた事件を連想させるような言葉がある。長編シリーズを読んでいるときは、意味がわからなかったが、本作を読むことで謎がとけた。長編、短編ともに読んだ人にだけわかるような、ちょっとしたご褒美なのかもしれない。久城がヴィクトリカとどのような出会い方をしたのか。セシルとヴィクトリカの関係とは…。それら、知らなくても別にいいかもしれないが、知っておけばより長編シリーズを楽しめるような短編ばかりだ。事件のインパクトよりも、キャラクター同士の出会い紹介といった意味合いが強い。

短編に登場するそれぞれの事件は繋がりがある。連作短編のかたちなので、先が気になる引きの強さがある。伝説の大泥棒であるクィアランの存在と、2代目クィアランが引き起こす事件の数々。GOSICKシリーズらしくなく、主要キャラクター以外が頻繁に短編に登場するのは、少し新しいかもしれない。GOSICK4ではかなりキャラ立ちしていたアブリルに絡む話なだけに、興味深く読むことができ、さらにはGOSICK4に登場した謎の「紫の本」の意味も本作を読むことで、やっと意味がわかった。GOSICK4を読んだときには、意味がわからずずっと心がモヤモヤしていた。

シリーズを読み続けるつもりの人は、読むべきだろう。




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