2008.9.25 官能小説である必要はあるのか 【海の見えるホテル なぎさの媚薬1】
■ヒトコト感想
作者の官能小説というのは愛妻日記で耐性ができていた。また読むつもりはなかったが、偶然読むことになった。ストーリー的には、官能小説にする必要は一切なく、性的描写を抜きにしても十分作者ならば面白くできたであろう印象をもった。ただ、アプローチの仕方が、家族関係や、友人とのつながりをモチーフにし、暗い未来を打開すべく、過去にタイムスリップするというような感じになるだろう。その流れは容易に想像できるが、新鮮味はない。だとすると本作のように、SEXがつながりとなり、未来を変えるというのもありなのかもしれない。現在親父真っ只中の男が青春時代に戻る。一番の違いをはっきりと描けるのは、本作のように性的な部分を前面に押し出しているからというのもある。
■ストーリー
わたしを買ってくれませんか―?渋谷の路地にたたずむ美しい娼婦・な ぎさを抱いた男たちはみな、不思議な夢を見る。青春時代に戻って、忘 れられない女性と再会する…
■感想
娼婦とすごした一夜で不思議な夢を見る。忘れられない思い出、夢を実現する…。青春時代の叶わない夢というのは誰にでもある。特に男ならば、本作のような経験は必ずあるだろう。過去には戻れずとも、現在、在りし日の思いを引きずりながら実物を見ると、時の流れが残酷なことを実感したりもする。あの時、あの瞬間、なんてことは夢のまた夢。そんな夢を実現し、さらには未来までも変えようとするのが本作だ。青春時代のあの場所、あの瞬間にタイムスリップし、自分の思いを遂げようとする。夢を実現する代わりに、心には言いようのない代償を払っているような気がした。
青春真っ只中の体に戻り、夢を実現し、さらには人助けまでしてしまう。そんな都合のよいことばかりが描かれている本作。しかし、夢から覚めた後には、四十三歳という、青春時代とは程遠い肉体と、衰えきった精力ばかりが目立つしょぼくれた親父だけが残る。これはかなり残酷だと思った。夢のような青春時代をひと時でもすごした後、普通よりも不幸な現実が待っているというのは、ふり幅の大きさからしてもかなりずっしりと重く心にのしかかるだろう。この後、苦難が続く現実へ、前向きに進むことができるのか、普通ならばできないと思ってしまった。
本作が官能小説である必要性を最初は感じなかったが、青春時代の思い出を端的に表すにはわかりやすかった。不幸な事件としても、今まで一般小説としては避けてきた部分を本作で思いっきり描いているようで、へんにリアリティがあるような気がした。若い時代へタイムスリップした男が現実に戻って真っ先に感じた肉体的な衰え。それすらも、官能小説だからこそ、これほどはっきりと描写できたのだろう。そう考えると物語としてSEXは非常に重要なものだということがわかる。ただ、最初にそんな内容だとわかっていればの話だが…。
内容を判った上で読めば、普通の官能小説よりもストーリー性はあるように思えた(普通のを読んだことがないので…)
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