憑神


 2009.11.11  最後に原作者登場… 【憑神】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
本作の主人公である別所彦四郎の印象は原作とほぼ変わりはない。マジメで能力もあり有能なはずが、運に見放され出世できずにくすぶる武士を妻夫木が好演している。くそマジメな役が本当に良く似合う。ちょっと抜けた部分があるというのも、ぴったりかもしれない。そんな彦四郎に降りかかる災難を面白おかしく描きつつも、最後にはしんみりとした感動を引き起こす。原作を読んだときには感じなかった感動を、最後に少しだけ感じることができたが、物語の流れとしては若干退屈に感じてしまった。彦四郎以外のキャラクターにもそれなりに魅力があるのだが、疫病神や貧乏神のインパクトに負けてしまっている。蕎麦屋の親父など、とても良い味をだしていて一番良かった。その他の、特に子供たちのキャラクターが微妙だったのが少し気になった。

■ストーリー

時は幕末。別所彦四郎は、下級武士とはいえ、代々将軍の影武者をつとめてきた由緒ある家柄の出。幼いころより文武に優れ、秀才の誉れ高かった彦四郎だが、戦のない平和な世においては影武者の出番などあるはずもなく、毎日暇をもてあますばかり。出世はもはや神頼みしかないと、すがる思いで祈ったお稲荷はなんと災いの神をよびよせるお稲荷様だった―。どこか憎めなくも必殺の労災力を持つ、貧乏神・疫病神・死神の三人の神に取り憑かれる彦四郎。人生のツキに見放され、不幸の神様にとりツカれ愛されてしまった男の運命は?

■感想
時代物というのは難しい。特別悪い部分はないのだが、この手の作品に慣れていないと、見ていて退屈に感じてしまうだろう。別所彦四郎の境遇や、江戸末期という時代背景。そのあたりの時代をしっかりと理解していれば、また楽しさも倍増したことだろう。武士の衰退と、腑抜けた幕府。彦四郎がマジメで昔ながらの武士であればあるほど、時代にそぐわないその行動が滑稽に見えてしまう。さらには、貧乏神や疫病神、はては死神に取り付かれたりと、面白要素にはことかかない。特に彦四郎があたふたする姿は、くそマジメな表情から一変するようで、とても良かった。

総合的に考えると悪い作品ではない。前半から中盤にかけて、少しのコメディ要素と彦四郎の苦悩。お役目を果たすことが、なによりも喜びだと感じる彦四郎。役目のために死ねれば本望と思うその心意気は、小さな子供たちからもその思いが表現されている。疫病神たちの厄災を人に押し付けることができたとしても、それをやろうとしない彦四郎。マジメな青年ぶりが妻夫木のしっかりとした表情に良く似合っている。ラストにいたる流れであっても、影武者という職性上なんとなく想像はできたが、わかっていてもしんみりとして、そして、感動してしまった。コメディから一転、最後は感動物語となる。泣きはしないが感動はするだろう。

それにしても、最後の最後で原作者が登場するという意味不明な演出はなんなのだろうか。あれにどういった意味があるのか。原作者としても快くOKしたわけではないだろう。一切セリフがなかったということからも、芝居など到底できるはずのない、素人が無理矢理出演させられたという雰囲気がありありとでている。ただでさえ微妙な演技に加え、セリフなしということで、表情だけで何かを表現しなければならない。原作者である浅田次郎の微妙な演技を見ていると、直前までの感動が一気に冷めたような気がした。もしかしたら映画館を出る直前に、現実に戻れという刺激のつもりなのだろうか。

原作と違う感動があったが、ラストですべてが台無しになった。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp