地球のはぐれ方-東京するめクラブ 村上春樹


2008.10.21  コタツにミカンで読む 【地球のはぐれ方-東京するめクラブ】

                     
■ヒトコト感想
表紙の絵からしてゆるさ全開だ。村上春樹を隊長として中年三人組が旅をする。その旅先はなんとも微妙な名古屋や熱海…。挿絵と奇妙な写真があいまって、とても不思議な雰囲気をかもし出している。旅エッセイ的な流れなのだが、本作を読んだからといってその場所に行きたくなるわけではない。へたすると、旅行に行こうと考えていた人が、二の足をふむかもしれない。それほどあけすけなく、身も蓋もない言い方をすると、けなしている。ただ、無理して魅力を穿り出すのではなく、あくまで自然に、出会ったものをそのままの感想で書いている。本作のようなゆるい思いをしたければ、これらの旅先へ行くのは間違いないだろう。

■ストーリー

名古屋、熱海、ハワイ、江ノ島、サハリンなど近場の秘境、魔都、パラダイスを、村上隊長率いる好奇心全開の東京するめクラブが徹底探検。驚天動地の発見が満載のファンキー・トラベル。村上春樹/吉本由美/都築響一

■感想
好奇心旺盛の中年三人組。ドリカム的男女構成だが、雰囲気はあくまでゆるく、中年らしい場面もあちらこちらにちりばめられている。なんちゃらウォーカー的に、どんなに魅力がない場所であっても、さも若者に大人気スポット的に紹介しようと思えばいくらでもできたのだろう。しかし、本作の趣旨は違う。ありのままに中年が感じたことをそのまま書いている。好き好んで頼んだくせに、あまりおいしくないと言ったり、見た目だけでなんやかんや言ったり、言いたいほうだいだが、そこに悪意がないので、やけにほのぼのとしてしまった。

旅先のラインナップがまたすばらしい。名古屋に熱海に江ノ島。あえてマイナーな場所をチョイスしている。しかし、僕自身、結構江ノ島には行くので、マイナー扱いでぼろくそに書かれていようとも、なんだか少しうれしくなるのは、同じ思いを共感できたという変な意識からだろうか。海外にいたっては、ハワイはまだしもサハリンだなんて…。まるで深夜特急的に、未知なる世界を一人旅するのかと思わせるほど未開の地という印象しかなかった。そして、実際のそうなのだと、本作を読んで思った。

東京するめクラブという名のとおり、読めば読むほど味がでる。さらには、実際に同じ場所へ行って、中年三人が感じたことと、自分が感じることを比較してみるのも面白いかもしれない。ただ、そんな奇特な暇人は少ないと思うが…。正しい読み方としては、てへっと笑いながら、へんなとこばっかり行ってるなぁとコタツに入りながらみかんでも食べて読むのが良いだろう。旅行するのであれば、もっと楽しめる場所へ行ったほうがいいのはまあ、まっとうな考え方かもしれない。

きわもの的な場所をあえて選ぶとすれば、本作のラインナップはばっちりなのだが…、その人の人間性によって感じ方も変わるかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp