たそがれ清兵衛


 2009.7.22  方言まるだしが良い 【たそがれ清兵衛】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
このシリーズは隠し剣鬼の爪武士の一分という2作品を見ている。もともとは本作が最初だが、見る順番はほとんど関係なかった。結果的に、2作を見ていただけに、ちょっと感動がうすれてしまったというのはあるかもしれない。特に隠し剣鬼の爪が優れていただけに、本作の良さが半減したというのはある。しかし、清兵衛の下級武士たる生活と、朋江のなんともいえない落ち着いた雰囲気はよかった。そして、極めつけはこのシリーズには欠かすことのできない方言だ。この方言があるおかげで、田舎者独特のにおいというのが画面からにじみ出ている。物語としてはなんてことないが、清兵衛のさえない風貌は見ていて、なんだかほっとけない気分にさせる何かがある。

■ストーリー

時は幕末、庄内地方の小さな藩の下級武士・井口清兵衛(真田広之)は、ふたりの幼い子どもと老母の世話をするため、勤めが終わるとすぐに帰宅することから「たそがれ清兵衛」と同胞たちからあだ名される冴えない男。しかし、幼なじみ朋江(宮沢りえ)の危機を救ったことから、実は剣の腕が立つことが世間に知れてしまい、ついには藩命で上意討ちの討ち手に選ばれてしまう…。

■感想
他の2作と比べると、物語としての山や谷は少ない。藩命にしても、武士ならば当然のことであり、それに思い悩むというのは筋違いな気がした。恨みつらみや何か大きなハンデがあるわけでもなく。純粋に剣の勝負をする。それをしぶる清兵衛の悩みはあまり共感できなかった。他2作がそれなりに、納得のいく問題だっただけに、余計そう感じてしまうのだろう。ただ、下級武士の雰囲気は断然本作のほうがすぐれている。乱れた髪に、疲れた表情。剣の達人という雰囲気をまったく感じさせない風貌はすばらしい。

清兵衛と朋江の微妙な関係は良かった。見ていて誰もが応援したくなる関係だ。二人がそうすんなりうまくいかないということもわかっているだけに、貧相で苦労ばかりしている清兵衛にはどうにかして幸せになってほしいという気持ちがわいてくる。幼い二人の娘とぼけた母親を面倒見る姿。内職ばかりして、まったく武士らしくない風貌。たそがれ清兵衛とあだ名されるほど、たそがれ時になるとさっさと家に帰ってしまう清兵衛。現代のリストラにおびえるサラリーマン像にも重なってしまった。

剣での果し合い。メインではないが、物語にメリハリをつける上で必要なのだろう。最後の戦いだけはなんだか腑に落ちなかった。清兵衛はどんな気持ちで戦っていたのだろうか。農民になっても良いと考えるほど剣を捨てた男は、一歩間違えれば、目の前の男と同じ姿になる可能性があり、今、その男を切ろうとしている。剣の時代から鉄砲の時代へと移り変わろうとする変換期。古い考えを持つものは次第に淘汰されていくのは当然だろう。方言まるだしの清兵衛が、この場面ばかりは、立派な上級武士のように見えた。

このシリーズにはずれはなかったようだ。



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