2007.1.14 プライドとは違うなにか 【武士の一分】
評価:3
■ヒトコト感想
”一分”とは何だ。その意味は本作を観ることでおのずと判ってくる。プライドとは違うなにか。これは一分としか言いようのないものなのだろう。キムタクが盲目の武士を演じているが、やはりどこかSMAPの木村拓也というような雰囲気を出している。特に徳平とのやりとりなどそのままだ。しかし、それが逆に下級武士でありながら、それなりの生活をしている雰囲気がでていてよかった。決闘シーンや加世との関係など観るべきところはいろいろとあるが、やはり本作は新之丞と徳平この二人がすべてだろう。徳平がいなければおそらく味気ない作品になっていたことだろう。
■ストーリー
三村新之丞は、近習組に勤める下級武士。毒見役という役目に嫌気がさしながらも、美しい妻・加世と中間の徳平と平和な毎日を送っていた。ある日、毒見の後、新之丞は激しい腹痛に襲われる。あやうく一命はとりとめたが、視力を失っていた。人の世話なしで生きられなくなった自分を恥じ、一度は命を絶とうとしたが、加世と徳平のために思い留まった。ある日、加世が外で男と密会しているという噂を聞く。新之丞は徳平に尾行をさせ、加世が番頭・島田と密会していることを知る……。
■感想
武士の一分を登場人物たちは貫く。島田でさえも武士の一分を貫いている。徳平を含めた男たちの思いというのはしびれるほど伝わってくる、しかしそれに比べると加世は印象が薄い。ほぼ唯一の綺麗どころと言っていいはずの加世がそれほどインパクトを残さないのは、キムタク以下男たちが強烈な個性を放っているというのもある。しかし贔屓目に見ても加世に感動や憐れみなどの感情を持つことができなかった。
今までの山田三部作と比べると明らかに暮らし向きが良い。もっとも武士らしい雰囲気をだしている。キムタクがキムタクらしい演技をしながらも盲目の武士を好演している。視線が中にさまよう演技は、演技と判っていながらも本当に見えないのかと錯覚するほどすばらしいものだった。クライマックスの対決シーンでは緊迫した雰囲気の中、漫画風に風の動きが線で見えるように、ゆっくりとまるで一枚の絵画のように止まって見えた。それは緊張感が画面から溢れ出ているからだろう。
結末は意外にあっさりと終り、なんだか最後はすべて丸く納まりハリウッド映画的にも思えた。観客的には一番望んでいた結末だが加世にそれほどよい印象を持なかったので、なんだか中途半端な印象は拭えなかった。徳平と新之丞のやりとりが想像以上にすばらしかったので、加世がかすんでしまったというのもあるが・・。
しかし緒方拳はどこにでも出てくる。今回は新之丞の師匠というおいしい役だが前回の隠し剣鬼の爪では悪い大名役だった。同じ人物が似たような雰囲気を出して演技をしていると多少混乱してしまう。
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