隠し剣 鬼の爪


2005.12.28 方言が良い味をだしている 【隠し剣 鬼の爪】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
これぞ侍魂だ。おそらく本作を見た外人は自分のイメージどおりの侍ということで納得すると共に
その男気と生き方に感動するだろう。
それほど皆がイメージする侍というのをものすごくよく表していると思う。
義理人情に厚く、藩命に従順でありながらも弱いものをほっとくことができず、自分の信念を曲げない。
それを永瀬正敏が演じることによってストイックさも加えられている。
全編とおして方言での会話なのだが、これがまた男らしさに拍車がかかり、
松たか子演じるきえはその方言によってかわいらしさとけなげさが倍増している。
外人にお勧めする侍映画と聞かれれば、最近では本作がベストな選択だろう。

■ストーリー
時は幕末、庄内・海坂藩の下級武士・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、
かつて自分の家に奉公していたきえ(松たか子)が嫁入り先で虐げられていることを知り、
その身柄を預かった。しかし世間の目は冷たく、やがてきえは宗蔵のもとを去っていく。
そんな折、謀反の罪で投獄されていた友人の弥一郎(小沢征悦)が脱獄。
家老の堀(緒形拳)は、非情にも宗蔵にその征伐を命じた…。

■感想
隠し剣 鬼の爪というタイトルではあるのだが、剣術で悪人をばったばったとなぎ倒すような物語ではなく
根底にあるのは武家社会への批判というか、いつの時代も権力を持った人間は悪いやつが多いというような
感じでかなり王道な悪代官的な家老も登場し、どことなく勧善懲悪な流れになっている。

前半は不器用な侍と農民の娘であるきえの物語なのだが、
ここで方言のすばらしさというかやわらかさが存分に発揮されている。
特に松たか子演じるきえの方言は本人の雰囲気もあるのだろうが、
言葉からやわらかさとやさしさがにじみ出るようであり
けなげに働く姿など、男なら誰でも守ってあげたくなるような雰囲気を醸し出している。
侍と農民という身分の違いを感じながらも主人の世話をする姿にホロリときてしまう。

後半は鉄砲という新しい武器が登場し剣の価値が薄れる中、片桐の剣の腕を頼られる場面が登場し
そこでやっと隠し剣 鬼の爪が登場する。そこでの緊迫した戦いもさることながら、
意外に実践用の隠し剣 鬼の爪はしょぼいという印象をもってしまった。
最後まで見るとその秘密が明らかになるのだが、本当の鬼の爪は
まさに門外不出の奥義というのもうなずける技だと思った。

華やかな場面しか印象にない侍の生活の裏側が描かれており、
おそらくこのとおりに実際は地味な生活が大部分を占めていたのだろう。
名誉を守るために腹を切るという侍の心意気や仁義を重んじる心。
海外での評価がどうかわからないが、侍の真の心を表現している本作は海外受けも良いのだろう。



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