2010.1.7 主人公の年齢に違和感 【魂萌え 上】
■ヒトコト感想
物語は敏子59歳が主役だ。最初から違和感をもっていたが、この主人公の年齢というのがかなり曲者だ。自分の母親ほどの年齢ということもあり、作中で登場する様々な出来事に対して、すんなりと受け入れることができなかった。どうも「女」の部分を出されると、なかなかきついものがあった。恐らく本作は読む人の年齢によって感じ方が変わってくるのだろう。もし、主人公の年齢が二十代や三十代であれば、まだそれほど違和感は持たなかっただろう。平凡な主婦が本作のような行動を起こすのか、同情すべき状態ではあるが、どうにも受け入れることができなかった。母親が存命中に父親の遺産をせびる息子たちというのも非常識だが、物語全体として敏子の行動には知らず知らずのうちに、とりはだがたってしまった。、
■ストーリー
夫が突然、逝ってしまった。残された妻、敏子は59歳。まだ老いてはいないと思う。だが、この先、身体も精神も衰えていく不安を、いったいどうしたらいい。しかも、真面目だった亡夫に愛人だなんて。成人した息子と娘は遺産相続で勝手を言って相談もできない。「平凡な主婦」が直面せざるを得なくなったリアルな現実。もう「妻」でも「母」でもない彼女に、未知なる第二の人生の幕が開く。
■感想
平凡な主婦がある出来事をさかいに変わっていく。この流れはOUTでも使われたパターンだ。ただOUTに比べて本作の敏子はどこにでもいる還暦前の主婦というような感じだ。夫に依存し外の世界を知らずに生きてきた人生。それが一人になったとたん、様々な出来事に遭遇していく。還暦に近い主婦から「女」の部分を見せられると、かなり違和感をもってしまった。相手の「男」にしても、はっきりいえばそういったことは無いと思っていた。想像を超えるというか、自分の常識が覆されたようで、ある意味インパクトはでかいが、心地よくはない。
59歳という年齢を老いていると感じるのか、それとも若いと感じるのか。とらえ方によって随分と変わってくるだろう。十代、二十代にとっては老人に近いかもしれない。逆に、七十代、八十代からすればまだまだ十分に若いのかもしれない。敏子が平凡な主婦というのも、若い人にとっては自分の母親を連想させるのかもしれない。そうなってくると、敏子の行動を素直に楽しめるかというと…、微妙だろう。恋愛をするのがダメだというわけではないが、なんとなく嫌悪感をもってしまう。これはそう思ってしまうのだからしょうがないのだろう。
息子と娘が遺産をあてにする。父親が死んだからといって、いきなり遺産をせびるというのもかなり非常識だ。親子という形だけで、実際には親子関係は崩れているのだろう。敏子にしても息子家族と暮らすのが嫌だというのも、少しわがままに感じてしまった。一緒に暮らしたくても、子供に拒否されるというのが多いなか、幸せな境遇をなんだかんだと理由をつけて否定しているような気がした。結局、まだ上巻ではあるが、この時点では本作の敏子には一切良いイメージがないまま終わってしまったというような感じだ。
下巻でどのように変わっていくのか。ほんの少し期待している。
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