大極宮 宮部みゆき


2009.8.22  知られざる作家生活 【大極宮】

                     
■ヒトコト感想
本作に登場する作家の中で、宮部みゆき京極夏彦のファンだ。大沢在昌だけは作品を読んだことがない。それでも、本作を読むと一番頭の中に生活がイメージでき、典型的な作家生活というものがよくわかった。逆に宮部みゆきはなんだかコアなゲーム話が多く、ゲームをする人でもついていけない部分があった。京極夏彦は、この時期にはかなり仕事をしていたというのと、相変わらずマニアックな趣味にあふれているという印象しかない。そうなってくると、三人の中で一番読みやすかったのは、まったく作品を読んだことない大沢在昌だと感じたのは意外だった。普段作品を通してでしか想像できないはずの、作家のプライベートが垣間見える作品だ。

■ストーリー

小説家の王道のような生活を送る山椒大夫・大沢在昌。パーティー、ゴルフ、酒と多彩な趣味に、多才な仕事が垣間見える。年間三六〇日、ゲームをする安寿・宮部みゆき。規則正しいゲームと仕事の日々。なぜにミヤベはゲーム女となったのか?小説の仕事から、装丁の仕事、はたまた伝統芸能の仕事、妖怪関係の仕事と、仕事漬けの厨子王・京極夏彦。趣味が仕事と言いきる、その究極の仕事とは。大沢在昌、宮部みゆき、京極夏彦・公式ホームページ「大極宮」の一年の日記に、三人自らがツッコミをいれ、笑い飛ばし、ボヤく。

■感想
古い作品なのである程度のタイムラグがあるのはしょうがない。それぞれの作者が手がけている作品であったり、登場してくるゲームであったり。時代を感じるのだが、その時期、この三人はこんな生活をしていたのだということがよくわかる本だ。大沢在昌の作品を読んだことがないのだが、一番雰囲気がよくわかり、読んでいて楽しかった。一番日記らしい書き方で、プライベートにどんなことをしているのかがよくわかった。出版社のパーティー、講演会、ゴルフ、酒。わかりやすいほどステレオタイプ化された作家の生活だ。

宮部みゆきはゲーム好きだというのはわかっていたが、ここまで好きなのだとは思わなかった。ほとんど毎日ゲームをし、金を稼いでいるわりには堅実な生活をする。作家の苦労というか、大沢在昌にくらべると、作家というよりもただのゲームオタクのように感じてしまった。仕事の話が少なかったというのもあるのだろう。ベストセラーを連発している作家にしては、地味な生活が作家らしくないと思わせるのだろう。ゲーム女というくくり方がぴったりのように感じてしまった。

一番驚いたのは、最後の京極夏彦が予想外に仕事をしていたということだ。出版されるペースが遅いので、あまり仕事をしないタイプだと思っていたがそうではないようだ。寝る間を惜しんでひたすら仕事をし続ける作家魂というか、これほどまで作家というのは辛い仕事なのかと思ってしまった。仕事以外には家族サービスとマニアックな趣味に終始している。あまりにマニアックすぎて、すんなりとはついていけない部分がある。趣味が仕事と言い切る作者にとって、この状況が一番幸せなのだろう。

作者の知られざる実態が垣間見える作品だ。



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