2010.2.10 読みやすく、共感できるエッセイ 【空は、今日も、青いか?】
■ヒトコト感想
エッセイ集というのは作者のプライベートを覗き見るようで、好きな作家であればぜひとも読みたいものだ。本作は初エッセイ集ということもあり、作者のパーソナリティが存分にでているような気がした。特に最近、桐野夏生のエッセイ集を読んだだけに、違いがはっきりとして面白かった。本作はターゲットとした年代が近いだけにそう感じるのかもしれないが、桐野夏生に比べてかなり読みやすいような気がした。時事問題あり、個人的なイベントの話あり、そして作者個人の考えあり。面白いことに作品のイメージそのままの作者だった。やはりエッセイを読んで作者のイメージが大きく変わるということは稀なのだろう。作中でも言及しているようにエッセイがうまい作家は長続きするらしい。本作を読んで、その意見にはおもいっきり賛成だ。
■ストーリー
長引く不況にあえぐ日本。広がる格差、減ってゆく子ども、増える自殺…生きることはますます窮屈になっている。けれど本当は、勝ち組負け組の線引きなんかに意味はない。きみはきみらしく、ゆっくりとすすめばいいんだ―。働くことや恋すること、趣味、子育ての話題から世界情勢まで、しなやかな視線で時代を切り取り、閉塞した「今」を生きる若者たちにエールをおくる。
■感想
「R25」に連載されたエッセイを集めた本作。年代的にもターゲットに近いこともあり、読んでいて非常に面白かった。不況や格差、子供の問題など、今でもそれなりに通じる話が、作者独自の見解と共に述べられている。IWGPシリーズなどのイメージどおり、どこか軽薄なといっては失礼かもしれないが、作家としての恐ろしさを感じることはなかった。個性的で頑固で近寄りがたいというイメージはまったくない。なんだか気軽に話しかけても気さくに答えてくれそうな、そんなイメージを本作からうけた。
いろいろな作家のエッセイ集を読んだが、読みやすさや親しみやすさに関してはトップレベルかもしれない。趣味が似通っているということもあるが、作者の書くエッセイはことごとく自分の琴線に触れたような気がした。小難しい話題を選び、知的なイメージを作るのも重要かもしれない。ある意味、小説作品とエッセイの違いがあれば、意外性があり面白いのかもしれない。しかし、本作はイメージそのまま、やはりIWGPの作者はこうでなければと思ってしまった。浅田次郎や村上春樹などもイメージとぴったりくるエッセイを書く。このエッセイとのイメージの一致はその後作品を読む上ですごく重要な気がした。
エッセイ内には、抗議に対しての反論という回もある。そんな回であっても、高圧的に感じないのは不思議だった。そして、読み終わると妙に納得してしまう。もしかしたら、論理に穴があるかもしれないが、それを感じさせない。本作を読んで強くそう思ったのは、比較対象とするエッセイ集を最近読んだからだろう。別にそれが悪いわけではないが、本作があまりに読みやすかったために、どうしても段違いに良く感じてしまった。作家という仕事の大変さと、作者のコメンテーターっぷりを見ていると、優雅な暮らしをしているように見える。エッセイを読み、その内情の違いを知るのも非常に興味深い部分であった。
作者の知られざる一面。本作に限ればほぼイメージどおりだが、やはりパーソナリティを知ることができるのは面白い。
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