作家的時評集2000-2007 高村薫


2010.5.15  予想以上に辛口だ 【作家的時評集2000-2007】

                     
■ヒトコト感想
高村薫の時事発言集。主に政治のことについて言及されているが、予想以上に辛口だ。2000年時点から収録されているため、懐かしい思いで読んだりもするが、当時の一般大衆の気持ちとあえて逆をいくような言葉が続いている。特にあの熱狂的支持を集めた小泉総理に対しては、必要以上にからんでいるような気がした。当時は日本中が熱狂していたような気もするが、そこであえてこれほど辛らつな意見を述べるというのはかなり勇気のいることだろう。2000年から2007年まで。すでに忘れ去られた出来事を読むことで、過去を思い出しながら作者の主張を考える。はっきり言えば、共感できるものはほとんどなかった。年代的なものや考え方の違いだろうか。ただ、違った意見を読むのも良いことだ。

■ストーリー

00年以降、新聞・雑誌に掲載された寄稿やインタビューを集めた時事発言集。「説得力ゼロ」の小泉、「論理も懐疑もない」安倍……揺れ動く政局に怒りつつ、日本の未来を憂う。政治だけでなく、自衛隊のイラク派遣、女児殺害事件、JR西日本脱線事故、9.11テロ、天皇制論議など、様々な社会問題についての鋭い批評は、言葉をなくした日本人への警鐘でもある。

■感想
作者のエッセイを読んで、やけに説教臭いと感じたことがあった。小姑に細かいことをごちゃごちゃ言われているようで、読んでいて気分のよいものではなかった。もしかしたら本作もそんな印象を受けるかと思いきや、予想外にすんなりと何の感情もなく読むことができた。おそらくリアルタイムに読んでいればまた違った感想を持ったかもしれない。期間をおいているからだろうか、それとも自分自身が大人になったのだろうか。まったく相反する意見に対して、すんなりと受け入れることができた。

本作は政治、特に小泉首相について語られている。それも好意的な意見ではなく、とことんまでこき下ろすような言葉が続いている。当時、ここまで辛らつな意見というのを書く人がいただろうか。メディアで騒がれ、日本中が熱狂した中で、あえて辛口な意見を述べる。大衆の意見と逆をいくような作者の考え。そんな意見を、どれほど風当たりの強い中で強行したのか。おそらく作者は強烈なまでに強情なのだろう。しっかりとした主張があり、たとえそれに共感できなくとも、一意見として落ち着いて読むことができた。

ジェネレーションギャップなのだろうか。作者の意見にほとんど同意できなかった。作中ではしきりに日本の将来の不安を嘆いている。それらを感じない自分たちは、作者の言うところの現状維持派なのだろう。政治に期待せず、流されるまま保守へ走る無党派層。まさに自分のことを言っているのだと思った。何か解決策を言うのではなく、将来に不安に対して何のアクションもおこさない大衆に対して警笛を鳴らしている。なんとなくわかってはいるが、身に迫る危機とは感じていない。多くの大衆はそう思っているのだろう。

本作を読んだからといって変ることはない。



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