半眼訥訥 高村薫


2008.12.7  ある意味イメージどおりだ 【半眼訥訥】

                     
■ヒトコト感想
マークスの山照柿の作者が女性であるということに最初は驚いた。作品を読んでもまったくイメージがわかなかった。エッセイというのは作者の人となりが良くわかるのだが、本作を読んでだいぶイメージが固まってきたような気がする。年代的にも親の世代より少し下になるのだろう。どうも、作者の主張を読んでいると説教されているような気がした。今の若者は、で始まる言葉はどの時代においても存在する言葉なのだろう。言っていることは良くわかるし、納得もできる。しかし、その丁寧な文章といかにも現代の若者に苦言をていするようなその雰囲気に、読んでいて少し疲れてしまった。もちろん、それ以外にも作者の小説のルーツを紐解くようなエッセイもある。そのあたりは非常に興味深かった。

■ストーリー

この国はいったい、どこに行こうとしているのか。振り返れば、精神の焼け野原―。「第二の敗戦」と言われる今日、私たちは神々の消えた国で何をなすべきなのか。都市、子供たち、家族、物語づくり、風土、音楽、住まいへの想い。国というもの、労働、心の充足への真摯な願い。世相を見すえる作家の初の雑文集。

■感想
作家というのは作品のイメージから、作者の人となりを想像されるのはあたりまえのことだろう。最初のイメージではまったく女性だとは考えられず、どちらかといえば横山秀夫のようなイメージをもっていた。しかし、何かの雑誌で作者の近影を見る機会があり、女性ということにまず驚いた。この作者はどんな感じなのだろうか。それをイメージするのに、一番の近道はエッセイを読むということだ。本作は基本的に新聞上に連載されたものや、そのほかの雑文が集められているようだ。最初にまずその丁寧な文章に驚いた。言い方を変えると、要は堅苦しくてさらさらと読むことができなかった。

その文体と、内容がまた現代の若者を嘆いたり、社会に対して物申したり。どうも親に説教を受けているような感じを終始もち続けてしまった。最初のイメージがそうさせているのだろうが、まるで教師のように感じてしまった。若者に対して理解できないというのは、まぁあるのだろう。主張していることが、どうしても古臭く感じてしまう。もちろん、それ以外にも納得できることや、興味深い部分もあるが、第一印象としてのイメージを拭い去ることができなかった。

本作には今まで想像もつかなかった作者の苦労や、生活スタイル。そして、どのような考え方を持っているのかが垣間見える。ある意味作品のイメージを崩していないのかもしれない。軽いエッセイであっても笑いに走ったり、ちゃかすこともなく、真剣にまじめな話を続けている。どうもその遊びのなさが読んでいて疲れた原因かもしれない。丁寧で普段使わないような語彙が多様されている文章も、その原因のひとつなのだろう。今後、作者の作品を読むうえで決してマイナスにはならないが、特別プラスになるわけでもない。

エッセイだけで作者のイメージを形作るのは危険かもしれないが、現時点ではそれしかない。



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