オリヲン座からの招待状


 2009.10.26  日本版ニューシネマパラダイス? 【オリヲン座からの招待状】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
古き良き時代をしのぶというのだろうか。まるで日本版ニューシネマパラダイス的な要素を持ち合わせている。しかし、そこまでの感動はない。テレビのない時代に映画館は大盛況だった。それが、店主の死をきっかけとしてオリオン座は廃れていく。実際には店主の死というよりも、時代的な影響の方が大きいはずだ。作中にもそれを匂わす描写はある。街の映画館であるオリオン座の良い時代と悪い時代。そして時代をへて当時子供だった二人が懐かしさを語る。基本的な流れはまったくニューシネマパラダイスだ。懐かしさを語ったとしても、感動はない。どことなくALWAYS的な要素も含まれており、時代に共感できる人は泣けるかもしれない。

■ストーリー

昭和30年代、先代の館主・豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子であった留吉(加瀬 亮)が、その志を引き継ぎ先代の妻・トヨ(宮沢りえ)と映画館を守る事となった。古い時代、周囲の人々からは師匠のかみさんを寝取った若主人、不義理な女将などと陰口を叩かれたりもした。さらには映画産業が斜陽になり始め、貧乏に耐えながらもひたすら映画を愛し、映画の灯を灯し続けた二人、そして何よりも純粋にお互いを思いやり、愛し続けたのだった。一方、そんなオリヲン座を一番の遊び場としていた幼い子供がいた。二人は毎日映写室の小窓から名画を覗いて成長した。

■感想
昭和30年代というのは映画が庶民の娯楽だったのだろう。テレビがないということを考えれば、それは当然なことかもしれない。本作は盛況なオリオン座からスタートする。着の身着のまま田舎から状況してきた留吉がオリオン座に転がり込むことになる。気難しい館主の下で修行をし、やがて一人前になっていく留吉。館主が病に倒れたあとを引き継いだかたちの留吉が、そのままオリオン座を引き継いだばかりにまわりから陰口を叩かれることになる。作中ではオリオン座が衰退した原因の一つのように語られている。時代の流れと、不運がかさなり、街の映画館はすたれていく。

古き良き時代の遺物というのは、どの時代にもある。ただ、現代に映画館が一つもないかというとそうではない。衰退していくオリオン座の影では、しっかりと生き残っている映画館もあるはずだ。幼い子供の遊び場となり、その子供たちが成長し、昔を懐かしむ。昭和30年代にどんぴしゃな年代の人は、もしかしたら懐かしさから泣けてくるかもしれない。ALWAYS的雰囲気で、自分の幼きころの美化された記憶を思い起こすのも良いだろう。自分の場合は、その年代についてなんの思いいれもなく、白黒映画に対しても特別な思いはない。そうなってくると、感動するのは難しくなってくる。

本作は原作が存在している。すでに原作は読んでいるが、そのときもそれほど感動を感じることなく、たいして印象にも残っていない。ただ、映像化されることによって、昭和30年代の雰囲気をはっきりと目にすることができるので、感動しやすいのは映画の方かもしれない。細かな時代考証はぬきにして、ちょっとしたうどんの屋台や、オリオン座で売られているナッツやラスク。こんな、なんてことない小物も、人によってはそれが涙腺に引っかかる何かかもしれない。見る人の年代や、その当時の思いいれによっては、かなり評価がわかれるような気がした。

ニューシネマパラダイスほど感動しないのは、印象的な音楽がなかったというのもあるかもしれない。



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