鉄道員(ぽっぽや)


2007.10.2 純粋な感動作 【鉄道員(ぽっぽや)】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
映画にもなった有名な本作。映画が短編を原作としているとは思わなかった。実際に読んでみると、まあ映画にするには丁度よい長さなのかなと思った。映画は見ていないが、評判を聞くとかなりの感動作らしい。原作も確かに感動するのだが、やはり長編と比べると薄っぺらい印象はぬぐえない。頭の中に想像するのは高倉健であり、広末涼子である。鉄道員ばかりがクローズアップされているが、僕の中では「ラブ・レター」の方が読み終わった後に心に残った。作者らしい作品といえばそれまでだが、ラブストーリーというイメージがない作者のこんな作品を読むと結構新鮮かもしれない。

■ストーリー

娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録。日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラー作品集にあらたな「あとがき」を加えた。

■感想
映画化され大ヒットした原作を読む場合、どうしても期待は膨らんでしまう。映画を見ていなければ、なおさら楽しみになる。まず短編ということに最初は驚いた。映画化されるとすれば、長編というのが頭の中にあったからだ。実際読んでみると丁度良い長さで、過不足はないように感じる。しかし、どれだけ感動できるかというと、それほど感動はなかった。年の離れた者同士の純愛とは違う、見返りを求めない自然な愛なのだろうか。見方を変えると、ただの不思議体験のように感じてしまうかもしれない。

本作は「鉄道員」以外にもいくつかの短編が収録されており、その中でも特に印象に残っているのは「ラブ・レター」だ。作者の暗黒時代での体験をもとに書かれているという本作。さすがにリアリティーがあり、真に迫った勢いを感じてしまう。会ったこともない人物にラブレターを書き綴る気持ち。最初はわからなかったが、読んでいくうちにしだいにその気持ちが、なんとなくだが理解できた。何でもデジタル化された現代であっても手紙の力というものをまざまざと思い知らされる作品だ。

その他、いくつかの短編があり、すべてが心温まる作品となっている。「オリヲン座からの招待状」などは、ノスタルジックな気持ちにさせながらも、リアルで抜き差しならない現実を描いている。どちらが悪いというわけではなく、自然発生的に到達した状態に対して、昔の思い出はどのように作用するのか。もちろん結末はご都合主義的に丸く収まるわけではない。男と女の現実と、ノスタルジックな気持ちは実はまったく相反するものなのだと感じた。

短編集としては好きな部類に入るが、どうしても長編と比べると、自分ののめりこみ度が落ちるような気がする。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp