Op.ローズダスト 上 福井晴敏


2009.6.14  高度に訓練された若者たち 【Op.ローズダスト 上】

                     
■ヒトコト感想
謎のテロ事件の首謀者とはいったい…。高度に訓練された若者たちが、目的が見えぬままテロを決行する。厳しい訓練の結果、驚異的な能力を持つ戦闘員に育つなんていうのは、よくあるパターンだ。厳しい訓練をくぐり抜けてきた仲間たちは、強い絆で結ばれている。そんな中、一人だけ組織を抜け出し、テロを取り締まる側にまわる…。定番すぎるほどの流れ。特に特殊な訓練をおこなう描写は、誰もがイメージする戦闘員を訓練する描写だ。様々なテロ行為であっても、事前の計画と巧みな能力ですべてを切り抜ける。そんな危険なテロ組織を果たして突き止めることができるのか。作者の作品らしく、特殊な専門用語が飛び交っている。まだ序盤ということもあり、テロ組織に発展した理由や、丹原だけが抜け出した事件などは語られていない。今後いったいどうなるのか、テンションはだんだんと高くなっていく…。

■ストーリー

都心でネット財閥「アクトグループ」を標的とした連続爆弾テロ事件が発生した。公安の並河警部補は、防衛庁から出向した丹原三曹と調査に乗り出すが…。

■感想
防衛庁、市ヶ谷、そして桜田門。この手の作品の必要要素がそろい踏みだ。そして、作者の作品ではおなじみのダイス。特殊な物語なだけに、この手の作品を読み慣れていなければ、たちまち置いてけぼりをくうことだろう。難解な専門用語。現代の世相を反映したような事件。北朝鮮がらみのテロと思わせたり、新興宗教のテロだと思わせたり、物語のテーマには古臭さを感じない。しかし、有事にそなえた隠れた組織や、戦闘員を訓練する特殊施設など、このあたりはものすごく定番中の定番だろう。五人もいれば、警察を手玉にとれるほどの能力を持ち合わせている。あまりに定番すぎて逆に心地よくなってきた。

ハムの脂身と呼ばれていた並河が丹原とコンビを組むことになる。人情に熱い並河と、目的のために最短距離を選択し、高い能力を示す丹原。この能力は非常に高いが、人との繋がりを持つことを拒む、一見クールな若者。そして、ルックスも良くて人の目を引き付ける。これも、ありきたりなイメージかもしれない。特に人との関わりを避けるあたりは、その理由を今後だんだんと語っていくのだろうが、あまりにありきたりすぎて、もはや何も感じなくなっている。そんな丹原と宿命のライバルともいえる元仲間もいる。それら元仲間たちが丹原と別れた原因となった事故や、理由。すべては中巻以降に明らかになる。

序盤ということもあり、最初は特殊な文言や、用語に慣れるまでに時間がかかる。それに慣れてくると、多少は読みやすくなるが、それでも一般的な小説と比べると読みづらい。警察組織を扱った作品として震度0がある。これも同じように複雑な人間関係をバックグラウンドに作品を構築しているが、非常に読みやすかった。作品に入り込みやすかったと言っても良い。本作は、なじみのない世界に変わってしまっている。ありえない現実ではないことはわかっているが、セムテック爆弾やダイスなどと言われても、漫画の世界というイメージでしかない。

今後中巻を読んでいくうちに、どのように印象が変わっていくかが気になるところだ。

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