Op.ローズダスト 下 福井晴敏


2009.6.30  とてつもなく長い作品が終わった 【Op.ローズダスト 下】

                     
■ヒトコト感想
ローズダストの真の目的とは…。荒唐無稽な目的が明らかとなり、衝撃を受ける。しかし、その目的が達成されたからといって、どうなるものでもない。なんとなくだが、ローズダストのメンバーは大きなことをして、自分たちの最後の場所を探しているだけなのではと思えた。予想通り、華々しく散っていくローズダストのメンバーたち。臨海副都心が崩壊していくことに対して、冷静な国民というのが、もしかしたら一番今の日本をあらわしているのかもしれない。はっきりいえば、それ以外の部分はあまりに荒唐無稽すぎる。結局本作は最後まで現実的ではない、どちらかというとアニメ的な要素がふんだんに盛り込まれていると感じてしょうがなかった。出てくる兵器は現実に則しているのだろうが、どうしてもありえないと感じてしまった。

■ストーリー

かつて防衛庁の非公開組織に所属していた丹原朋希と入江一功。二人の胸には常に、救えなかった一人の少女の言葉があった。同じ希望を共有しながら、宿命に分かたれた二人。戦場と化した東京・臨海副都心を舞台に、この国の未来を問う壮絶な祭儀が幕を開けた。

■感想
ローズダストの目的はある意味達成されたのだろう。それにしても、臨海副都心を沈没させるということが、こうもあっさりと実現直前までいくのだろうか。予想どおり総力戦となり、主要メンバーは次々と華々しく散っていく。予想できたことだが、中でも一番印象に残っているのは間違いなく留美だ。入江一功などよりも、よっぽど印象に残っている。ビルに立てこもりながらひたすらガンナーとしての使命を果たしていく。何台ものコブラを撃沈し、最後まで抵抗する。圧倒的な戦力差であっても、ゲリラ的戦法で対等以上に戦い続ける。留美の最後に比べると、入江たちはインパクトが弱い。最後の大ボス的扱いのはずが、随分とあっさりやられてしまう。

ローズダストの最後と共に、印象的なのは、やはり上巻からそうなのだが、難解な専門用語だ。さすがに上、と読み続ければ多少の慣れというのはでてくる。それでも一本調子な物語とあいまって、文字を読んではいるが、ほとんど頭の中に入ってこなかった。なじみのない専門用語はそれだけで、ちょっとしたハードルになる。物語が予想外の展開となり、引き付けられるものであれば、また違ったのだろうが…。本作は誰もが予想するように、あっさりと物語りは進んでいく。予想外とすれば、それは主役チームにどれだけの犠牲がでるかということだろう。

本作のようなテロが現実に起こるとは思えない。また、起こったとしても、これほど右往左往することなく、もっと前段階で全てを無に返すような強力なミサイル攻撃などが繰り広げられるだろう。中途半端な人道主義。かと思えば、一人の隊員に全ての命運を預けるような行動をとったりもする。事なかれ主義なのか、それとも残酷なのか、最後まで曖昧だった。最終的には、全てを裏で操っていたはずの謎の”集まり”の正体は明らかとならず、崩壊したというようなちょっとした描写で抑えられている。事件の大きさに比べると、その後は随分とあっさりしている。もしかしたら、この部分が一番現実に近いのかもしれない。

長い。とてつもなく長く、読みづらい作品がやっと終わったという感じだ。



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