ナイチンゲールの沈黙 上 海堂尊


2010.2.4  まだミステリー色は無い 【ナイチンゲールの沈黙 上】

                     
■ヒトコト感想
いつもどおり濃いキャラクターが登場する本シリーズ。今回は白鳥の変わりに、強烈な刑事が登場する。ただ、本作ではまだ上巻ということもあり、ほとんどミステリー風味はない。最後にやっと事件が発生するが、それまではキャラクター紹介と看護師の仕事のあらましが説明されている。田口は当然のこととして、猫田や速見など他のシリーズで登場したキャラクターがでてくると、シリーズの強みというものを感じずにはいられない。まだ、概要説明の段階である本作。最後の事件を読んでもそれほど複雑なトリックがあるとは思えない。どれだけ小夜や子供たちが関係してくるのか。ここまでの段階では田口はほとんど活躍しそうもないが、どうなのか。まだ、まったく判断できない。

■ストーリー

舞台は小児科病棟。病棟一の歌唱力を持つ看護師・浜田小夜の担当患児は、眼の癌――網膜芽腫の子供たち。眼球摘出をせざるをえない彼らに心を痛めた小夜は、患児のメンタルケアを不定愁訴外来担当の田口公平に依頼し、小児愚痴外来が始まった。

■感想
看護師の仕事というのがどういうものか。そして、小児科の現状や医療現場の問題点を語るのはいつものとおりだ。複数のキャラクターが入り混じり、複雑な人間関係と医療現場ならではの仕組みによって、物語は面白い方向へと動いていく。上巻ということで、今の段階ではまだミステリーとしての不思議さや、トリックの複雑さを感じることはできない。看護師と患者の距離感や、医者と看護師の力関係など、本作ならではの特徴は相変わらず光っている。患者にとって医者よりも身近な看護師がメインということもあり、興味も自然とわいてくる。

ジェネラルルージュの凱旋よりも本作を先に読むべきだったのだろう。本作に登場する速水には、すでにそれなりの印象を持ってしまっている。小夜にしてもある程度のイメージはついている。ただ、本作は小夜がメインということもあり、看護師の周辺ばかりがクローズアップされることとなる。小児科医療の過酷さと、なり手がない理由。そして、患児のメンタルケアを行う田口など、普通ではうかがい知れない部分を知ることができ、なんだか得した気分にさえなってきた。

上巻も終わりにさしかかったころ、ミステリーらしき事件が発生する。タイトルとそこにいたるまでの伏線から、読者に犯人と想像させ看護師がどのように関わり、最終的には意外な人物が犯人だったという流れになるのはなんとなく想像できる。ただ、今の段階ではまったく犯人はわからない。多くのキャラクターが登場するだけに、意外な犯人のパターンは無数にあると思われる。下巻でいったいどのような流れになっていくのか。面白さの肝になるのは確実に下巻のできしだいだ。

下巻には強烈なインパクトを期待してしまう。

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