MAZE 恩田陸


2010.6.17  謎の迷宮に背筋が寒くなる 【MAZE】

                     
■ヒトコト感想
人が次々と消えていく謎の遺跡。入るたびに迷路の形が変わり、まるで生き物のように頑強に成長していく。不思議な世界と奇妙な建物。次々と明らかになる真実と登場人物たちが考える予測で物語はどんどんと不思議な方向へと動いていく。まるで人を飲み込むように瞬時にして人が消失する迷宮。不可能な状態であればあるほど、読者はその謎解きに興味がわいてくる。まるで古代エジプト遺跡を発掘するテレビ番組のように、強烈な引きの強さがある。続きが気になり、途中で止めることができない流れ。遺跡にまつわる不思議な現象が実際に起きるあたりは、もう何がなんだかわからなくなり、登場人物と同じように混乱してしまうのは確実だろう。

■ストーリー

アジアの西の果て、白い荒野に立つ矩形の建物。いったん中に入ると、戻ってこない人間が数多くいると伝えられている。その「人間消失のルール」とは?謎を解き明かすためにやってきた4人の男たちは、果たして真相を掴むことができるのか?

■感想
まるで「豆腐」のような遺跡の中で、人が次々と消えていく。人間消失ミステリーと言えるのかもしれないが、遺跡の不可思議さが強烈なインパクトを残す。登場人物たちと同じ目線で「豆腐」の謎を探り、さまざまな推測をたてる。遺跡にまつわる伝説や、情報を整理すればするほど、人間が消えるなどありえないように思えてくる。それをどのようにして解明するのか。どんな答えがでたとしても、そこにいたるまでに十分強烈なインパクトを残す人間消失ミステリーだ。

成長する遺跡。幻覚を誘発する植物。様々な言い伝え。ちょうど作者の作品に「上と外」というものがあり、遺跡や伝説などの部分では近いかもしれない。中東地域に出現した謎の「豆腐」をどのようにして解明していくのか。まるで人が遺跡に飲み込まれるような恐怖感。ラジコンを使い、未知の遺跡へと入り込んだ際の衝撃。その情景を想像すると、背筋がゾクゾクするような感覚に襲われる。いつ遺跡からこの世のものとは思えないモノがでてくるのか。遺跡自体が成長し、すべてを飲み込んでしまうのか。はたまた、遺跡が宇宙に繋がっているのか。想像力はドンドンと膨らんでしまう。

古代遺跡の謎を解く鍵は、人が消失するルールにあるのだろうか。結末間近まで、人間が消える原因は明らかとならない。そのため、物語が佳境に近づくにつれ、ただの不思議な現象でお茶を濁されるのかと思ってしまった。しかし、本作はしっかりと現実的な回答を示している。この手の作品ではしょうがないことなのだが、蓋を開けてみると「なぁーんだ」ということになってしまう。ただ、そこに至るまでの強烈な引きの強さは特筆モノかもしれない。

中盤まで、どういったオチになるのか、まったく想像つかない。



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