上と外1 素晴らしき休日 恩田陸


2010.4.18  壮大な物語の序章 【上と外1 素晴らしき休日】

                     
■ヒトコト感想
壮大な物語の導入部である本作。まったく予備知識なしに読んだので、この後どういった流れになるのかまったく想像つかない。複雑な事情がある家族一同がそろった中央アメリカで、どのような出来事が起こるのか。本作単体での評価をだすとすれば、可もなく不可もなくといったところだろうか。個々のキャラクター紹介と、事件が起こる土地の説明。タイトルやキャラクターの特殊な個性から、このあとの物語を想像することも難しい。いったいどういった物語なのか。非常に短くコンパクトにまとめられているために、サラリと読める。ラストの終わり方から、次巻には何か大きな動きがあることは確実だが、はっきりしたことは見えてこない。続けて読んでこそ面白さがわかる作品かもしれない。

■ストーリー

両親の離婚で別れて暮らす元家族が年に一度、集う夏休み。中学生の楢崎練は久しぶりに会う妹、母とともに、考古学者の父がいる中央アメリカまでやってきた。密林と遺跡と軍事政権の国。四人を待つのは後戻りできない「決定的な瞬間」だった。

■感想
本作単体で評価することにあまり意味がないかもしれない。壮大な物語の序章というべき本作。複雑な事情をかかえた家族が、定期的な儀式として父親が生活する中央アメリカに集合する。情勢不安な国で、マヤ文明の遺跡などを観光している家族に、ある出来事が襲い掛かる。はっきりいえば、この段階ではまだ何もわからない。事件や出来事が起きるわけではなく、複雑な家庭の説明と、個々のキャラクター付けに終始している。そのため、本作だけでは少し物足りなく感じるかもしれない。今後続く出来事への布石がつまった作品といえるだろう。

本作はちょっとした短編と思えるほど短い。そのため、サラリと読み終わってしまう。確実に言えるのは、本作は続けて読むべきだ。下手すると三巻くらいまとめて読んで、やっと普通の長編小説と同じくらいの分量になるくらいだからだ。物語としても、まだ本作だけでは引き付けられるものはない。ラストにはそれなりに続きが気になるような終わり方をしているが、是が非でも読みたいというわけではない。物語の舞台がマヤ文明ということもあり、それにまつわる何かがあるのだろうか。それとも単純に、ひどく現実的な問題を扱っているのだろうか。それともファンタジー的なものなのだろうか。

奇妙なタイトルと特別インパクトがあるわけではない導入部。本シリーズに対してまったく事前知識なしで読み始めたので、今後どうなるか予測不能だ。逆にいうと余計な情報がないので、先入観なしに読めるというのはある。予定調和的に何か出来事が起きるのを予測しながら読むのではなく、まったく無垢な状態で読む。このことは物語の展開によっては面白さが倍増するが、下手すると期待ばかりがどんどんと大きくなり、増大する期待のため不当に低い評価となるかもしれない。

なにはともあれ、まずは続きを読まないことには話しにならない。

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