2009.7.25 犬が見る事件 【心とろかすような-マサの事件簿-】
■ヒトコト感想
パーフェクト・ブルーの続編。犬のマサ目線である本作。やはり、犬目線ということで特殊な部分が多々ある。それがミステリーとしてどの程度効果を発揮しているのか。マサだから良かった部分と、悪かった部分がある。事件やトリックはたいしたことがなくても、マサ目線であれば、違った趣となる。どうにも動物が普通に他の動物たちと話をするというのが、映像として思い浮かばなかった。物語として重要な役割を果たしているのだが、違和感をおぼえた。事件はあくまでマサが解決するわけではなく、マサは情報を読者に伝える役目だ。そのため、少し強引な部分もある。マサが知らないところで得た情報は、マサが立ち話を盗み聞きしたということになっている。なんだか強引すぎる。
■ストーリー
あの諸岡進也が、こともあろうに俺の糸ちゃんと朝帰りをやらかしたのだ!いつまでたっても帰らない二人が、あろうことかげっそりした表情で、怪しげなホテルから出てきたのである!!―お馴染み用心犬マサの目を通して描く五つの事件。
■感想
ある事件が起こり、それを解決しようとする探偵社の面々。そこにちょこまかとくっついているのがマサだ。このマサ目線で語られる本作。人間では気付かない部分に言及することもあれば、簡単に聞き込みできないという制約もある。マサ目線ということで面白くなっている部分もあれば、そうでもない部分もある。どちらかといえば、前作ともどもあまり得意なジャンルではない。人間の心情描写をマサが勝手に代弁しているので、そこにも違和感をもった。動物目線ということで、どうしても薄っぺらい印象はぬぐえない。
いくつかの短編が収録されている本作。すべてはマサ目線であり、似たような雰囲気だ。事件を解決するのはマサではなく、探偵社の人間やその周辺にいる人々だ。そのため、マサの推理が展開されるが、それがそのまま伝わって解決するという展開にはならない。マサの推理がやけに的確であったり、鋭くてもどうなるものでもない。マサの特徴でもある、他の動物たちと会話できる力。カラスや猫、同じような犬たちとの会話で事件を推理するのは面白いが現実味はない。
事件のそれぞれが深刻であったり、深い因縁がありそうなのだが、それを紐解くすべがない。マサは被害者たちに事情聴取できるわけでもなく、加害者の気持ちになるわけでもない。ただの犬だからだ。しかし、その目線のベースには、どこか隠居間近の老探偵を思わせる雰囲気がある。人生を達観したような、悟りをひらくのに近い感覚かもしれない。そんなマサ目線の作品だけに、やけに説教くさくなったりもしている。達也と糸ちゃんの朝帰りを信じられないと語るマサ。なんだか、ただ単に孫を心配する隠居老人のように思えて仕方がなかった。
マサ目線というのは新しい、しかし財布目線などもあるくらいだから、特別ではないのだろう。
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