機動戦士ガンダムUC 4 福井晴敏


2009.1.31  異端的なガンダム 【機動戦士ガンダムUC 4】

                     
■ヒトコト感想
ガンダムシリーズといえば、島の名前が付いた拠点だろう。ソロモンを彷彿とさせるような拠点「パラオ」。そこへガンダムを奪還に向かうネェル・アーガマ。そして、とうとうユニコーンの秘密が明らかとなる。今までのガンダムと比べると明らかに異質で怨念のようなものすら感じてしまうユニコーン。ニュータイプを殲滅するために生まれてきたようなこのMSが今後どのように変わっていくのか。ガンダムの計り知れない能力が連邦の新兵器という理由ではなく、何か超常現象的な雰囲気すらただよわせている。科学で証明し、理詰めで語る本作の中で、この部分だけ異色だ。まだまだ連邦の乗組員となりきれていないバナージ。このままいくと常に異端者としてガンダムを操縦することになるのだが、果たしてどうなるのか…。

■ストーリー

敵軍事拠点「パラオ」からガンダムを奪回せよ!連れ去られたバナージとユニコーンガンダムを奪回すべく、ネオ・ジオン本拠地「パラオ」への決死の攻略戦が始まる!

■感想
フル・フロンタルという強烈なキャラクターが登場したのが前回。そして、今回はとうとうユニコーンの本性が明らかとなる。相手がニュータイプとわかると変貌し、その未知なる力を発揮する。パイロットの操縦をまったく無視してまるで意思を持つように自由に動き回る。この強烈な設定は本作ならではだろう。何か遺恨の匂いを感じるユニコーンガンダム。生態認証でバナージだけしか受け付けないというのは、バナージを強制的に参加させる都合の良い方便かと思っていたが、何か出自が強烈に関係しそうな匂いを感じてきた。

「パラオ」でバナージが出会う人々。テロの本拠地とはいえ、そこには当然生活する人々がいる。戦争のむなしさは誰もがわかっているが、その流れを止めることは難しい。作者の作品は、ガンダムという題材を用いてもかならずその他大勢に焦点を当てる場面がある。コロニーで生活する人々もひとりひとりきちんと人格がある。MS同士の派手な戦いによって破損したコロニーにも人は住んでいる。シリーズのメインであるMS同士の激しい戦いは少ない代わりに、周りの人々の描写が思う存分描かれている。

戦いの描写の中で描かれるMSを、すんなりと頭の中で描くのは難しい。これは小説の難点でもある。しかし、本作では挿絵によってしっかりとそれを補完している。フル・フロンタルはどんなMSに乗っているのか。ユニコーンはどんな状態で、どのように変化していくのか。ビジュアル的にもすばらしく、すぐにでもアニメ化できそうなクオリティだ。しかし、今現在の進み具合ではおそらく3話程度で終わってしまうのだろう。濃密な情景描写と深い人間関係。それらをしっかりと描いているので、どうしてもページ数をさいてしまうようだ。

ユニコーンガンダムの正体には超常現象的な何かを感じずにはいられない。

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