2009.1.29 赤い彗星は生きていた? 【機動戦士ガンダムUC 3】
■ヒトコト感想
本作のポイントは文句無く、シャアの再来と呼ばれる男だろう。まさにシャアを彷彿とさせる雰囲気。初代ガンダムのファンならば、必ず何か感じるものがあるだろう。赤いモビルスーツは3倍のスピードで動く。このことは初代ガンダムのころから言われていたことではある。子供心に操作する人が違えばそうなるのかと思っていたが、本作はその謎を解明している。物理的な作用で3倍の速さとなる。それは操縦者の超人的な動体視力と、技術のたまものだということもしっかりと理解できた。ガンダムの世界をこうもシリアスに描きながら、雰囲気を損なわない。なつかしのセリフや、ザビ家の後継者など、初代ガンダムを見ていないと楽しめない部分もあるが、本作を読むような人にとっては、初代ガンダムを見ているのは当然のことだろう。
■ストーリー
スペースコロニー“インダストリアル7”を襲ったテロ事件から半日、バナージとオードリーは地球連邦軍の戦艦“ネェル・アーガマ”に収容されていた。両者に絡みつく『ラプラスの箱』を巡る様々な思惑。その最中、「シャアの再来」と呼ばれる男、フル・フロンタルが赤いモビルスーツで強襲をかける。通常の3倍のスピードで追い迫る敵を前に“ユニコーンガンダム”に勝機はあるのか―。
■感想
フル・フロンタルという名で登場する謎の仮面の男。これがシャアなのか違うのか、それはどちらでもかまわない。群を抜く強さを示す真紅のモビルスーツ。それだけで大満足だ。たった一機のMSで戦艦を殲滅する。その圧倒的な力も魅力的だが、連邦軍との交渉時に見せた容赦のない物言いに、かなりしびれてしまった。Zガンダムなどでは、どこか弱弱しさが見え隠れしていたが、本作ではそれがまったくない。強い信念の元、目的を達成するために、どんなことでもやり遂げる。そんな気概のようなものを感じてしまった。
フル・フロンタルという主役級の登場人物にやられる、ある意味雑魚キャラ的人物にも、本作ではしっかりとキャラクター付けをしている。そのことにより、MS戦でただ爆発するのみだったMSにもパイロットが存在し、それぞれ家族もいれば恋人もいるということを思い起こさせ、一人の人間として認識させる効果がある。それと共に、アニメでは表現しきれない戦争のむなしさというものが、戦闘のたびにMSが撃墜されるたびに感じることができる。それは連邦であってもジオンであっても関係ない。このあたりは、小説ならではの重みというべきだろうか。
ユニコーンガンダムが何か謎の力を秘めており、圧倒的力を発揮するかと思いきや、フル・フロンタルにはかなわない。このあたりは、今までのシリーズを踏襲しているようで、これから更なる進化をとげていくのだろう。ジオン対連邦という単純な図式ではなく、連邦という巨大な組織にテロ的なもので立ち向かうジオンの残党というべきだろうか。ザビ家の末裔とシャアと思わしき人物。はっきり言えば、ガンダムシリーズの中では初代以外はそれほど興味がなかった。その初代を正式に引き継ぐような形の本作。今後の展開が楽しみで仕方が無い。
ボロボロになったネェル・アーガマがこのまま長い戦いの旅へと突き進んでいくだけなのだろうか?単純な戦いだけに終始しないような気がしてならない。
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