2008.10.15 正統なガンダムシリーズスタート 【機動戦士ガンダムUC 1】
■ヒトコト感想
作者のガンダム好きは過去の作品からも明らかだ。ファーストガンダムや、その続編好きにはたまらない、っというかそこにターゲットを集中しているようだ。最近のビジュアル重視のキャラクターが活躍し、ガンダムが複数でてくる作品とは明らかに異なる。硬派で懐かしく、定番的なガンダムだ。出自に何か秘密がありそうな主人公の少年。身分を隠しながら行動するヒロイン。そして、その他仲間たち。昔なつかしの雰囲気そのままだ。小説という媒体とはいえ、ガンダムの世界を十分に堪能できる。さすが過去にガンダム小説を描いた作者だけある。本作では、まだ世界背景とキャラクターの紹介に終始しているが、これだけでも十分面白さを感じることができる。
■ストーリー
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって一世紀。工業用コロニーに住む平凡な少年、バナージ・リンクスは、謎の少女オードリー・バーンとの出会いから『ラプラスの箱』を巡る事件に巻き込まれてゆく。宇宙世紀の開闢とともに生まれ、開放されれば連邦政府が終焉すると言われる『箱』の正体とは。新たなるガンダムの鼓動が、世界の革新の予感を告げる。
■感想
ファーストガンダムから逆襲のシャア、その後の世界を描く作品。昔からのガンダムファンとしては、最近のガンダムは正直言うと見ていない。コアなファンがよく言うことだが、ガンダムと言えばファーストガンダムだ。そして、本作はその流れを汲んでいる。作者の筆力による濃密な設定。もし、アニメになったとしたら、これほど重い作品にはならないだろう。ただ、小説として読むには心地よい。細かく、専門用語が飛び交う本作は、作者お得意の重厚なアクションを思わせる。
登場人物たちも、ファーストガンダム世代に受け入れやすいようになっている。定番といえば定番。安易といえば安易なのかもしれない。しかし、この設定で新しい物語が作られるということが重要なのだろう。マーケティング的には流行らないかもしれない。しかし、作者は昔自分が好きだったガンダムを踏襲しながらも、新たな世界を生み出している。作者のガンダム好きが作品からにじみ出ているように感じられた。
表紙その他がどう見ても漫画的であり、中身を見なければ漫画と勘違いしてしまうかもしれない。挿絵がなくとも小説として十分成り立つのだが、この挿絵が世界観をさらに広げている。頭の中にはそれぞれのガンダムがあるのだろうが、挿絵で統一したビジュアルを提示されると、作中での行動や、出来事に違和感を感じずにすむ。最初はなじみのないキャラクターも、登場するたびに、挿絵を思い浮かべ、頭の中で縦横無尽に動き回る。なんだか、勝手に頭の中でアニメ化している気分だ。
どの程度の長さになるのかわからないが、かなりの長編になるのだろう。そして、おそらく映画かTVかわからないが、確実に映像化されるだろう。その時を楽しみにしながら、読んでいくつもりだ。
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