2008.3.13 アニメを超えている 【月に繭、地には果実 上】
評価:3
■ヒトコト感想
ターンAガンダムの小説版。ガンダムはファーストガンダムしか印象にない。もちろんリアルタイムで見たわけではないが、一番強く印象に残っているのはファーストガンダムだ。ガンダムを小説で読むなどと考えもしないことであり、それが面白いのかどうかも未知数だ。しかし、読んでみると、思いのほかすんなりと物語に入り込め、頭の中ではしっかりと世界観ができあがった。アニメでは華々しいガンダムの戦闘が描かれているが、そこには多数の犠牲者がいるということを、この小説版は特に力を入れて語っているようだ。単純なドンパチものではない。戦争の犠牲になる者がおり、戦争を回避しようと必死になる指導者もいる。ガンダムの隠れた一面というところだろうか。
■ストーリー
かつて、地球を壊滅寸前にまで追い込んでしまった人類。一部の者は月に逃れて地球の再生を待ち、地球に生き残った人々は、おぞましい滅亡の記憶を封印した…。それから二千年の時を経て、月の民は地球帰還作戦を発動。決行に先駆け、地球に送り込まれた「献体」の中に、少年・ロランがいた。
■感想
ガンダムといえば、ガンプラであったり熱狂的なファンであったり。それらは結局、華やかなモビルスーツ同士の戦闘を描いているからこそ、でてきたものなのだろう。登場人物のキャラクターの素晴らしさというのもあるかもしれないが、それらはアニメだからこそ、なしえたことだろう。それをあえて小説化。それも自分の中ではマイナーとも思えるターンAガンダムというものを題材としたことにかなり驚いている。正直ターンAガンダムについてはまったく事前知識がない。そんな中で本作を読んではたして楽しめるのかと不安だった。
当初の不安は読み始めてものの十分で解決された。ガンダム独特のアニメっぽさがそこには一切存在せず、しっかりとした世界観が描かれており、とてもアニメを元にして書かれた作品とは思えなかった。最初にモビルスーツに乗り込むきっかけであったり、戦いが始まる原因であったり、まったくそこにはアニメっぽさがなく、しっかりとした小説として成り立っている。若干気になる部分としては、モビルスーツの描写に対してはどうしても想像力には限界がある。ビジュアル的な魅力は薄れるのは仕方のないことなのかもしれない。
ファーストガンダムではなぜ戦争が起きているのかまったく意識することなく、モビルスーツ同士の戦いを純粋に楽しんでいた。本作では自分が大人になったというのもあるが、何故戦争しなければならないのか、そして、そこにはどんな人々が関わっているのか、それらがしっかりと描かれていたのでとても満足している。さらに本作では、アニメでは決して描かれない戦争の負の部分にあえて力をいれているようにも感じてしまう。このあたりはアニメとはまったく違った趣きを感じる要因なのだろう。
導入部分の上巻としては十分読者を引き付ける魅力がある。今後、中、下と続くなかでしっかりと完結させることができているのか、それが一番気がかりな部分だ。
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