閑人生生 平成雑記帳2007-2009 高村薫


2010.6.24  リアルタイムな事件を辛口で 【閑人生生 平成雑記帳2007-2009】

                     
■ヒトコト感想
作者時評的作品はいくつか読んだが、リアルタイムに近いかたちで読むのは初めてだ。作者が考える政治や事件についてのコラム集。そのとき起こった出来事に対してリアルタイムに語っているだけに、その後の流れを考えない言葉が多い。そのため、今となっては、作中ではこう語られているが、実際にはこうなっているんだよという場面が多々ある。特に政権交代に関することや、地球温暖化対策など。そのときは真実であっても、時間の経過と共に真実は変わっていく。作者の言葉は辛らつなものが多く、弱い者の味方をしているような気がする。しかし、綺麗ごとというか政治家については、どんなすばらしい政治家が現れたとしても、作者に言わせるとどこか問題あり、という言葉が出てくるような気がした。

■ストーリー

マネーゲームの果てに人々から失われていくものは何か。少年犯罪の報道で言われる「ふつうの家庭」の「いい子」とはどういう子か――。現代日本で起こるさまざまな社会問題に、作家高村薫がリアルタイムで感じたことを書き綴った時事評論集。鋭い直観と深い洞察で、政府やメディアのあり方に感じる「違和感」を浮き彫りにする。

■感想
コラムのトーンとして、世間に物申す的な流れなのでしょうがないのかもしれないが、かなり辛口だ。政治経済、政府の方針、景気回復の兆し。すべてのことについて作者は自分の心の中の不安を、辛口を交えながら語っている。それはまるで、老人たちが近頃の若者は…と言うように、常に世間に対して何かしらの文句を言わないと気がすまないのではないかと思えてくるほどだ。おそらく作者にもすばらしいと思える政策や、公共事業があるだろう。それらを手放しで褒めるのは難しい。コラムというのは、何かをおおぴらに褒めるよりも辛口で語るほうが楽なのだ。

政治や、世間の行く末について真剣に考えている作者らしく、様々な言葉で語られている。確かに正しいことを言っている気がするし、間違ってはいない。ごく普通に生活する人々の目線に立った言葉も良い。ただ、自分の中ではそこまで政治に関心がなく、消費税が上がろうとも、株価がどうなろうとも、円高になろうとも、ほとんど関係ないと思ってしまっている。はっきり言えば関係なくはない。景気が悪くなれば給料が下がり生活が苦しくなる。そんなことはわかりきっているが、政治に期待しようとは思わない。目の前の一票を誰かに投じたからといって、すぐに景気が良くなるわけではないからだ。そうなると、景気が悪くてもそれなりの生活レベルが保てるように、自分の実力を高める方に力を注ごうとしてしまう。

作者が感じる違和感には概ね同意できる。自分では気付かない部分を伝えてくれる場面もある。何かおかしいと感じながら、気付かずに過ごしていたことが突然はっきりと頭に浮かぶこともある。社会問題というのは普段はほとんど考えることはないだろう。こういった機会に、普段からしっかりと考えている人の意見を聞くというのは、自分の考えのたな卸しになってちょうど良いのかもしれない。必ずしも作者の言うとおりの行動をしなければならないわけではない。そのことを意識するだけでも随分違うだろう。

世間のニュースを鵜呑みにするのではなく、違った目線で見ることも大事だ。



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