マークスの山 上 


2007.10.11 重厚で硬派な雰囲気 【マークスの山 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
重厚で硬派な雰囲気。警察内部の軋轢を事細かに描いている。この雰囲気は横山秀夫作品に酷似している。作品的には本作の方が先に発表されているのだが、僕自身が読んだ順番としては本作の新鮮さをそれほど感じることができなかった。これがもし、横山作品を読む前であったら相当インパクトがあっただろう。本作がミステリーとして評価が高いので、単純に警察内部の描写だけでなく、緻密なトリックがあることを期待した。下巻に向けて興味は尽きないのだが、今のところ特別目新しいと感じたり、引き付けられる部分はあまりなかった。

■ストーリー

「俺は今日からマークスだ!マークス!いい名前だろう!」―精神に「暗い山」を抱える殺人者マークス。南アルプスで播かれた犯罪の種子は16年後発芽し、東京で連続殺人事件として開花した。被害者たちにつながりはあるのか?姿なき殺人犯を警視庁捜査第一課七係の合田雄一郎刑事が追う。

■感想
二重人格的な人物が物語りのキーとなり、物語の世界は16年前から脈々と繋がりを保ち続けている。警察内部の極端な個人主義と、仲間意識の薄さ。毎回驚かされることだが、同じ事件を捜査する者同士、これほどお互いにライバル視しているのだろうか。単純に考えても事件解決の支障になっているような気がした。そんな激しい警察内部の軋轢と、不可解な死体。この死体の謎をどのように解決するのか。興味は下巻に持ち越すことになる。

堅い文体と、小難しい雰囲気。ちょっと読みなれていないと、とっつきにくく感じるかもしれない。ミステリーとしてもこの上巻は時系列的に入り組んでおり、登場人物も多いので、少し混乱するかもしれない。この大きく広げた風呂敷をどのようにうまくたたむのか。そして、最後に壮大なカタルシスか、もしくはアッと驚くような出来事がまっているのだろうか。ミステリーとしても評価が高く、
直木賞まで受賞した本作。どうしても期待せずにはいられない。

重厚で、密度が濃い本作。ぎっしりと詰まった文章を読むのには相当苦労する。少しでも油断すると、自分がいったい今どんな状況を読んでいるのか判らなくなる可能性もある。これでもかというほど硬派で、緩い雰囲気を微塵も見せることなく突っ走っている。本作に熱を入れて読めば読むほど、ぐったりと疲れきってしまうかもしれない。しかし、そこまで熱中する価値はあるのだろう。

すべては下巻のできしだいだ。

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