フル・フロンタル


 2010.4.20  人間の真の姿か? 【フル・フロンタル】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
様々な人々の真の姿を描いた本作。複雑に絡み合う人間関係と、それぞれの思惑。突発的な想いもあれば、入念に練りこまれた考えもある。人が行動するのに、どういった理由が必要なのか。それぞれの物語をじっくり見るとそれなりに面白い。ただ、それぞれを交差さえ、巧みに人物を入れ替わり立ちかわり登場させることで、複雑さの中に関係性を描いている。その複雑な流れについてこれるかが一番の問題かもしれない。売れっ子俳優が多数登場し、どこか啓蒙的匂いも感じさせる本作。思ったのは、過去にアカデミー賞を受賞したクラッシュに似ているということだ。ただ、クラッシュほど社会問題に突っ込んでいるわけではなく、人間それぞれに焦点を当てているような感じだ。

■ストーリー

金曜日のロサンゼルス。ストレスが溜まっている会社人事部長の女性リー(キャサリン・キーナー)は、脚本家兼雑誌ライターの夫カール(デイヴィッド・ハイド・ピアース)に離婚を告げる置き手紙を書く。カールはそれに気づかないまま出勤。リーに愛人がおり、それが映画スターのカルヴィン・カミングス(ブレア・アンダーウッド)であることも知らない。しかも編集長(ジェリー・ウェイントローブ)に解雇を告げられる。カルヴィンは現在、人気女優のフランチェスカ・デイヴィス(ジュリア・ロバーツ)と映画を撮影中。劇作家のアーサー(エンリコ・コラントーニ)は、今夜が舞台の初日だというのに、ヒトラー役の俳優(ニッキー・カット)に悩まされている。またアーサーは、インターネットで知り合ったリーの妹のマッサージ師リンダ(メアリー・マコーマック)とデートすることになっていた。

■感想
ちょい役にまで結構名の知れた俳優がでている。それぞれのキャラクターはどこか異質で、真っ当ではない。よくこの役を引き受けたなぁという俳優もいる。登場したかと思うと、なんとも情けないキャラクターであり、次のシーンでは死体として登場する。はっきりと主役というべきキャラクターがいないというのもあるが、どこか物語りが散漫で、まとまりがないように感じられた。最終的にはよくわからないが良い方向へと進んでいるようだが、納得はできない。大きな物語の流れを感じ取るしかないのだろう。

それぞれのエピソードで、強烈なキャラクターたちが怒りを周囲にふりまく。かと思えば、そのキャラクターは別のエピソードでは優しさに溢れるキャラクターとなる。理不尽な世の中に対しての怒りか、それとも人が素直に裸になれば、本作のようになるのか。人の裏側までも描いているような本作。金や女や地位と名誉のために右往左往するのがバカらしく見えるのは、そう見えるように描いているからだろう。ラストに心温まるようなエピソードを残したことで、作品全体の印象が良いものとなっている。

この手の作品は、観衆がどれだけエピソード同士の繋がりに気付き、驚きながら共感できるかにかかっている。古い作品だがスナッチはつながりの絶妙さと、全体構成の面白さが良かった。クラッシュは本作に近いかたちだが、全体のテーマが社会的であり、希望が持てるラストに感動してしまった。本作では、ハリウッドセレブやエリート会社員のそれぞれ個人の問題をピックアップしているために、大きなテーマというような印象はない。もうしわけ程度にブラピがでていることに、何か大きな意味があるのだろうか。

人間模様を楽しめる人には良いかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp