2010.1.31 毒のある女たち 【アンボス・ムンドス-ふたつの世界】
■ヒトコト感想
女の怖さや汚さを書かせたら作者の右にでるものはいないだろう。本作の短編に登場する女たちは、毒があり嫌な女ばかりだ。しかし、それが物語りに必要な要素であり、魅力でもあることはわかっている。男が読むと女の嫌な部分ばかりが目に付くようで、女性恐怖症になるかもしれない。さらには、男では気付かない女のずるさや怖い部分に焦点を当てているようでもあり、強烈なインパクトがある。このまま、なんの救いもなく終わるはずがないと思っていたら、サラリと終わったり。徹底的に女性を貶めているような気もした。これを女性作家が書いているということに大きな意味と、さらには真実味が増してくるのだろう。なんとなくだが、作者の想いが色濃くでているような気もした。
■ストーリー
不倫相手と夏休み、キューバに旅立った女性教師を待ち受けていたのは非難の嵐だった。表題作の他、女同士の旅で始まった生々しい性体験告白大会、若い女の登場に翻弄されるホームレスの男達、など七つの短篇を収録。
■感想
この短編集を読み終わって、とっさに考えたのは作者が欲求不満であったり、何か女性として恵まれない体験ばかりをしてきたのではないかということだ。どの短編にも毒があり、さらにその毒の元となっているのは、例外なく女だ。植林などはここまで毒を吐く必要があるかと思うほど、毒だらけだ。そして、救いも何もなく終わっている。不細工に生まれた女が不幸だと想い、そんな考え方から卑屈となり、最終的には性格までもがおかしくなっていく。もし、現実に同じような境遇の人がいたとしたら、本作を読んむとかなり嫌悪感をもつことだろう。
一風変わった作品としては、作家同士の諍いを描いた作品もある。おそらくこれは何かモデルがあるのだろう。全体を通して、すべてが作者の想像だけでなく、どこかでヒントになるような材料を得て、それを作者なりに加工しているような気がした。その加工の仕方が、強烈な女の嫉妬やねたみをメインとし、作者らしい味をだしている。これが作者のカラーだということは分かって読んでいるのでまったく問題ない。しかし、もし、本作を宮部みゆきが書いていたとしたら、かなり反響は大きかっただろう。作者のイメージにあった作品といえるかもしれない。
屈折した想いと、的外れな八つ当たり。不快になるはずの場面であっても、どこかワクワクしてしまった。「怪物たちの夜会」であっても、普通の不倫作品というイメージはあるが、それでも女の恐ろしさが全面に押し出されている。不倫相手の家に押し入り、相手の妻と対決するなんてのは、単なる嫌がらせでしかない。女の思考原理を信じられない思いで読みつつも、もしかしたら、この感覚はどの女性にもあるかもしれない。なんてことを思ったりもした。強烈なインパクトを残すことは間違いない。
作者らしい短編集ということなのだろう。
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