OUT 下 桐野夏生


2009.12.5  結末は思わぬ展開に 【OUT 下】

                     
■ヒトコト感想
上巻で極限まで高められた気分を、この下巻でどのように処理してくれるのか。主婦たちが起こしたバラバラ殺人を警察、佐山、十文字の三者が追いかける展開となるかと思っていた。しかし、物語は思わぬ展開へとシフトしていく。まさか、主婦たちが経験を活かしビジネスにまで昇華させるとは想像もつかなかった。事件の真相を暴くことを警察は諦め、佐山と十文字だけが絡んでくる。なんだか随分と頼りない警察だと思い、物語の流れは主婦たちの異常性ばかりを際立たせてくる。最初から感じていた違和感は、この主婦たちの壊れた心だ。それは佐山にも言えることだ。下巻になり、進むべきベクトルが変わった本作。まさかその方向へ進むとは思わなかっただけに、驚きは強い。

■ストーリー

主婦ら四人の結束は、友情からだけではなく、負の力によるものだった。その結びつきは容易に解け、バランスを欠いていく。しかし動き出した歯車は止まることなく、ついに第二の死体解体を請け負うはめになる。彼女たちはこの現実にどう折り合いをつけるのか。

■感想
バラバラ殺人を犯した主婦たちが、どのようにして事件を隠蔽していくのか。その流れになるかと思っていたが、想像外の展開へとうつりかわっていく。本作では警察の存在はもはやお飾りでしかない。あるのは十文字の異常なビジネス感覚と佐山の執念。そして、壊れた主婦たちの心ばかりだ。弥生やエツコはまだしも、邦子と雅子は明らかに壊れている。特に邦子はその性格から何まで、読んでいて嫌悪感を抱かずにはいられなかった。本来なら多少同情される立場にあるはずの邦子も、その結末を読んでも何の感想もなかった。逆になんだか少しすっきりしたりもした。

雅子や佐山であっても、異常さは際立っている。雅子に対しては登場したときから、違和感をもっていた。不幸で繋がった四人のなかで、一人だけ異質な雰囲気。卑近なことに目を向けるのではなく、悟りを開いたようにどこか一人で高みを目指しているような。もしくわ、すべてを諦めた無の境地のような、そんな雰囲気を感じていた。一方、佐山に対してはその異常さが上巻では多少影を潜めていたが、下巻では強烈なまでの執念で主婦たちを追い詰めていく。到底理解できることではないし、想像することすらためらわれる描写が多数あった。

主婦たちには明るい未来がないことはわかっていた。かすかに宮森カズオと雅子が万にひとつの可能性でブラジルに逃亡するかもと思ったが、やはりとんでもない結末となっている。多少なっとくいかない気分はあるが、すべてを清算するには、それぞれのキャラクターに決着をつけさせる必要があったのだろう。その中で地味に一番心に残っているのは、ヨシエの決断かもしれない。義理の母親の介護に疲れたヨシエがとった行動というのは、悲しさやむなしさもあるが、一番理解できることかもしれない。それにくらべて、雅子に関しては最後の最後までまったく心情が理解できなかった。

意外といえば意外な展開だ。すんなりと王道をいかないあたりが、より強く印象に残ってる。



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