1Q84 BOOK2 村上春樹


2010.7.8  予想通りの不思議な世界 【1Q84 BOOK2】

                     
■ヒトコト感想
BOOK1では謎の宗教団体のリーダーに対する興味と、青豆がどういった行動をとるのか非常に気になった。本作ではしっかりとその続きが語られている。予想通り精神世界的な物語になりつつあり、リアルな世界を描くつもりはないらしい。天吾と青豆が存在する1Q84という世界は、パラレルワールド的な世界で、そこで、もがき苦しむのではなく、ただ受け入れるだけの二人。宗教団体のリーダとふかえりの関係が明らかとなり青豆の行く末は気になるが、物語としてはある意味完結していると思う。BOOK3があるようだが、そこでしっかりと現実的な答えを導き出してはいないだろう。不思議な精神世界に悩み考え、一人で結論をだす。そんな展開が目に見えている。

■ストーリー

10歳の時に出会って、離ればなれになった青豆と天吾は、この世界で自分一人で生きていく孤独に耐えながら、リアリティの感じられない日々を暮らしていた。しかし、1984年に2人とも同じ組織に対する活動にそれぞれが巻き込まれていく。

■感想
いつもの作者らしい展開だ。BOOK1で登場した様々な事象に対して、現実的な原因や答えを導き出すことなく終わっている。リトルピープルとはいったい何なのか。謎の宗教団体のリーダーはなぜ変わってしまったのか。ふかえりとリトルピープルの関係は。すべてをいつもの不思議な出来事として答えを出さずに終えている。そのため、現実的な行動をとるはずの青豆も、リーダーと出会ってからは、その不思議な世界に取り込まれ、リトルピープルの存在をそのまま信じてしまう。天吾であっても、二つの月や、リトルピープルに疑問をいだきながらもあっさりと受け入れる。この世界の人々は物分りが良すぎる。

特徴的な文体と、登場人物たちの無機質とも言える言葉。そこに現実的な人間味を感じることはない。架空の物語に登場する、ある方向へ向けて完成された人物たちが動き回る。青豆と天吾が出会うことがあるのか、ということが本作のポイントの一つであった。また、元の1984に戻ることができるかも気になる部分だった。本作は結局リトルピープルを含めた世界の不思議さを存分にアピールし、得体の知れないモノの存在を印象付け、世界を煙に巻いている。謎の宗教団体に狙われるはずの青豆と、青豆を匿う老婆がどうなるのか、それくらいは描いてほしかった。

Book3ではどのような物語を展開するのか。本作で完結したとしてもまったく不思議はない。というか、これ以上物語を引っ張る材料がないように思えた。二人が出会うにしろ、元の世界に戻るにせよ。リトルピープルがその存在理由や、目的をはっきりさせないことには消化不良の感は否めない。逆に考えると、この投げっぱなし的な終わり方が人々の想像を掻き立てるのかもしれない。個人個人が物語の奥深くを想像し語り合う。明確な答えが示されていないので、勝手に想像するのはその人の自由だ。

BOOK3がどういった方向になるのか。本作は、いつもの作者的作品であったので、特別な驚きはない。




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