絶対幸福主義 


2007.9.20 幸福とはいったいなんなのか 【絶対幸福主義】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
作者の競馬極道話はすでに周知の事実となっている。本作もエッセイのスペシャリストという名に恥じない、読みやすく面白い作品となっている。ただ、すでに浅田次郎のエッセイを読んでいる場合は、特に目新しく感じることはない。「幸福」とはいったい何なのか、そして、今幸福なのか。作者の人生観が色濃くでてはいるが、競馬狂であったり暗黒の時代であったりはすでに分かりきっていることだ。ただ、作者の作家としての生活というものがほんの少し垣間見えたようで、そのあたりは興味深かった。

■ストーリー

競馬ではしゃぎ、ラスベガスで生まれ変わって、勝っても負けても至福の時。あなたは人生、楽しんでいますか?誰のものでもない「自分の人生」を歩くあなたは、絶対「幸福」です―。幸せになりたい全ての人に贈る、愛と笑いの新・幸福論。

■感想
よく言われるのは金があれば幸せになれるわけではないということだ。ただ、それは金がある人の言うことで、金が無い人にとってはまず金を手に入れることが第一なのだろう。作家として成功した作者が、いまさらそんなことを言っても説得力はない。そのことを分かっているかのように、小難しい説教のようなものはない。人生を幸福に過ごすためには何が一番重要で、どんなスタンスで過ごしていくか。特別目新しいことが書かれているわけではないが、切り口が絶妙なため、ついつい真剣に読んでしまう。

金を稼ぐがそのぶんギャンブルもする。良くあるパターンは稼いだ金をギャンブルで散財するというパターンだ。それも散財すること自体が楽しいというような語り口で書かれたものを良く目にする。本作はそんなことはまったくなく、ギャンブルをするからには常に勝ちにいき、いっさいの妥協は無い。どんなに仕事が忙しくても、競馬だけは欠かさず、さらには貪欲なまでに勝ちにこだわる。このあたりが、ただの成金が書いた幸福エッセイとは違うところだろう。

作者の経験してきた人生は並大抵のことではない。それは今までのエッセイでも良く分かる。普通に考えると、ここまで成功するとは到底思えない。しかし、それをやってのける。さらには、こうやって読者に対して幸福とは何かということを説明するまでになっている。一筋縄ではいかない人生を歩んできた人のいうことには、
強烈な説得力がある。別に同じ道を歩もうとは思わないが、気持ちの上では参考になることが多々あった。

タイトルだけ見ると、宗教的な啓蒙作品のように思えた。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp