極道放浪記 殺られてたまるか! 


2007.9.9 ホントに本当なのか? 【極道放浪記 殺られてたまるか!】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
浅田次郎といえば、泣かせる感動モノを書く作家という印象が強い。それが突然、自分の経験として極道モノのエッセイを出され、「はい、そうですか」とにわかに信じることはできない。作者の作風とはかけ離れた世界での物語りのようで、一部は創作だと、読み終わった今でも思っている。書いている内容はとんでもないことなのに、軽快な語り口で深刻さを感じさせない。それと共に、作中で語られる犯罪行為がたいしたことのないようにも感じてしまう。実際はそうとうやばいことなのだろうが、そう感じさせないのは、もしかしたら本当に作者が体験したことだからそうなるのだろうか。

■ストーリー

「私はいずれ有名中学から高校へと進み、東大卒業とともに華々しく文壇にデビューするはずであった。だがしかし、なぜか予定が狂った。予定通りに有名中学に入った私はそのとたん、ドロドロの不良少年に変貌し、すさまじい勢いでドロップアウトしてしまったのである」―直木賞作家が二十代に体験した嘘のような本当の日々を顧みる幻の懴悔録。

■感想
エッセイの中で若いときにはあんなことをしたとか、こんなことをしたなどと書いてあり、それをバカ正直にすべて信じるわけではない。特に本作のように作者の作品がエッセイの内容とかけ離れている場合はなおさらだ。しかし読んでいると、「もしかしたら、本当に…」と思えてくる。一番の要因は、数々の犯罪や人の生死にに関して、やけにあっさりと軽く語っているということだ。自分で一度経験しており、自分の中では数あるなかの一つという思いであればそうなるのかもしれない。

丁寧な文章で語ってはいるが、内容はハードだ。しかし、ユーモアを含め、仮に関係者がひどい目にあったとしても、すべてを冗談ですませるような、そんな雰囲気もある。単純にフィクションであればつまらないが、逆にこのごまかし方が、まさに
経験からでてくるものだというように感じた。詐欺がなんやら、拳銃がほにゃららなど、普通に考えればまっとうなことではない。日常とはかけ離れすぎているために、事実からだんだんと創作に頭の中で勝手にシフトしていくのだろう。

恐ろしいことに、本作で登場する出来事を読んでいると、犯罪なんてどうってことないと思えてくる。前科がつくことも、なんでもないこと、そして、懲役をくらうギリギリが普通なのだと思えてくる。まった、非日常だが、そう思わせる作者の語り口にやられてしまった。

このシリーズは、あといくつかあるらしいが、恐らくそれらをすべて読んでから、最終的に創作かどうか判断しよう。



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