2007.7.4 一貫した競馬感 【競馬どんぶり】
評価:3
■ヒトコト感想
作者の競馬感が色濃く出ているエッセイ。連載形式で書かれたであろう本作では、同じようなことが何度も出てくる。言い換えれば、競馬に対するスタンスが一貫しているということなのだろう。競馬場へは第一レースから行けだとか、自分の金銭感覚を持てだとか、極力場外馬券場には行くなとか。普通の人では考えられないほどの労力を競馬に費やし、その対価としてはトータルの収支はマイナスとなっている。単純に競馬が好きでなければ何十年も続けられないだろう。たとえ前日徹夜したとしても、次の日は朝早くから競馬場に姿を見せる。これほどのめりこむ趣味に出会いたいものだ。
■ストーリー
「私は本書に語られている通りに馬券を買い続け、競馬とともに生きてきた。書かれていることを体得すれば、おそらく誰にでも、私と同じ競馬人生を約束されるであろう」―競馬歴三十年、競馬の達人はなぜ身を滅ぼさずにすんだのか?競馬とは何か?馬券とはいかなるものか?人生最大のゲームの楽しみ方と醍醐味を指南する必勝競馬エッセイ。
■感想
三十年競馬を続けてきた作者だからこそ書けるエッセイだろう。独特の競馬感と圧倒的な説得力。本作を読むと単純に競馬を趣味で楽しむ人も、本気で競馬で儲けようとする人も参考になる部分があるだろう。ここぞというときには大きく賭け、たとえGⅠだろうが、予想が固まらなければ傍観者となる。これができれば、まさに真のギャンブラーといえるのだろう。
いまやパチンコに市民権を奪われた感があるが、競馬にも根強いファンがいるはずだ。本作が必ずしも競馬の魅力を余すことなく伝えているとは思えない。ただ、作者である浅田次郎の競馬に対する熱い思いが語られている。見方によっては素人お断りな印象を競馬に持つかもしれない。実際にはライトな競馬ファンも沢山いるが、本当の競馬好きには本作に共感できる部分が沢山あるのだろう。
ちょっと前ではディープインパクトの名前を良く聞いたが、本作に登場する懐かしい名前のサラブレッドたちも、なぜかその時代に一切競馬をやったことがない自分にさえ聞いた覚えがある。それはつまりその時代のメディアでは、それほど名前が連呼されていたということだ。こうやって何年経っても名前に聞き覚えがあるほどの情報量があるということは、競馬の世間に対する浸透力もたいしたものだと改めて思った。
何年かぶりに競馬場に行ってみようかと思える作品だ。
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