輪違屋糸里 上 


2007.11.5 時代に翻弄される女たち 【輪違屋糸里 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
壬生義士伝が新撰組を支えた男たちの話であるとすれば、本作はその男たちに翻弄される女の話なのだろう。新撰組に対する知識は前回読んだ壬生義士伝で知った程度で、それ以外の詳しいことはまったくわかっていない。そんな中、本作を読むと、近藤や土方のさらに上には芹沢という侍が存在し、そして、この芹沢が一筋縄ではいかない強烈な個性を持った人物であるということがわかった。良く知っている新撰組の体制になるまで、どのような出来事があったのか、そして、女たちはどのような関わり方をしたのか、すべては下巻で明らかになるのだろう。

■ストーリー

文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在である輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。

■感想
尊皇攘夷の士というイメージと荒くれ者というイメージのある新撰組。本作を読む限りでは、まだ荒くれ者というイメージの方が強い。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組と、島原の芸妓。この時代独特な極度の男尊女卑でありながらも、果敢に自分の主義を主張する女たち。新撰組の内部抗争と女たちがいったいどのような関係があり、影響してくるのか。上巻だけでも、すでに女がらみでゴタゴタが起きそうな予感すらある。

壬生義士伝が感動作という触れ込みなら、本作はなんになるのだろうか。今のところ感動作という雰囲気はない。時代に生きる男に翻弄されながらも、惚れた男から離れられない女の悲しさを描いているのだろうか。それとも、女たちは新撰組の内部事情を描くための、単なるオマケなのだろうか。興味を引かれるのはあくまで新撰組の部分だが、
女たちとの係わり合いも決してすてることはできないだろう。

歴史的事実として芹沢の暗殺と女たちは密接に関係していると思われる。それを作者の独自の解釈で描いていくのだろう。あの暗殺の裏にはどのような経緯があったのだろうか、そして、その時、傍らにいた女たちは、その場面をどのような思いで見つめていたのだろうか。

新撰組に興味がある人にはもちろんのこと、壬生義士伝を読んで気になった人にはぜひ読んでもらいたい作品だ。

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