月に繭、地には果実 下 


2008.3.17 全てのシリーズの集大成 【月に繭、地には果実 下】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
この後に残るような、奇妙な読後感は久しぶりかもしれない。ガンダムといえばアニメ。それもファーストガンダムが好きな自分にとっては、このなんとも残酷な終わり方に惹かれてしまう。主要人物が次々と死んでいく結末。悲しくもあり、それでいてラストだという余韻が楽しめる。恐らくアニメは本作のようなラストではないのだろう。黒歴史を紐解く場面では、過去のガンダムシリーズが描写されている。なつかしくもあり、そんな関係性があったのかと驚かされる場面でもある。そして、この繋がりが最後まで、虚構といいながらも、壮大なシリーズを読んでいるような感覚にさせてくれる。本作を読んでしまうとたとえがっかりするとわかっていても、アニメを見たくなってしまう。

■ストーリー

夥しい爆発の光が咲き乱れる宇宙は溶鉱炉と化し、次々と墜落する機体が月面を灼熱させる。多くの人間を犠牲にした戦争もついに佳境に。“ターンA”のコクピットで、ロランが見つける真実は?そして“ターンA”の意味とは?「ガンダム」の歴史に新たな一ページを刻み、小説の無限の可能性を提示するSF大河ロマンの金字塔。怒涛の完結編。

■感想
うすうすとは感じていたが、主要なガンダムシリーズすべてが繋がっていたということが本作を読んではっきりとわかった。黒歴史を紐解いていくと、数々の歴史が明らかになってくる。色物的ガンダムシリーズや女子受けを狙った作品など、あるのかもしれないが、正統派なシリーズとしては本作が一番新しいのだろう。そう考えると、完結編である本作は、もしかしたらすべてのシリーズの集大成といっても良いのかもしれない。黒歴史を表現するシーンでは、それほど詳しくはないが、過去のガンダムシリーズの場面が頭に浮かんできた。

ある種、このシリーズの定番なのかもしれないが、ラストは主要人物が次々と死んでいく。そこに物悲しさを感じつつも、これでなければ刺激が無いと思ってしまうのだろう。アニメが本作と同様のラストだとは思わないが、嫌でも興味がわいてしまう。いったいアニメはどのような結末なのか。恐らくがっかりするだろうが、見たくなるのはしょうがない。

作者の筆力があったとしても、ガンダムというブランド化されたものを小説化するのはとても勇気がいることだと思う。それも完全なオリジナルではなく、アニメ化されるものならなおさらだ。かならず言われるのはアニメとの比較であり、世界観をどれほど壊していないかだろう。この、下巻を読み終わって感じたのは、完全にガンダムというものをモノにしていながらも、小説として成功している和少ない作品だと思う。別系統で現在新作が発売されているようだが、恐らくそれもそのうち読むことだろう。

本作をきっかけとして作者の別の作品を読むことになるだろう。



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