少し変わった子あります 


2008.3.4 少しどころではない 【少し変わった子あります】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
本作に登場する世界はわからなくもない。幻想的でもあるし、どこか高貴で上流階級の選ばれたものたちが楽しむ娯楽のようにも感じる。ただ、突き詰めていくと、ものすごくマニアックな性癖を持っているようにも感じられた。ただ、一緒に食事をするだけ。そこに漂う雰囲気を楽しむという一風変わった趣向なのだが…。相手の女性が変わった子ということで、このタイトルがついているのだろうが、実際にはそこに通いつめる男が一番変わっているのではないだろうか。この不思議な雰囲気は好きだが、あまりに常人には理解したがい楽しみなので、共感はできなかった。ただ、いつもの森博嗣節は十分に感じることができる。

■ストーリー

失踪した後輩が通っていたのは、いっぷう変わった料理店。予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるという…。謎めいた料理店で出会う「少し変わった子」たちが、あなたを幻想的な世界へと誘う物語。

■感想
少し変わった子。いや、もしかしたら大分変わっているのかもしれない。どこか特殊で、費用としても絶対に安くなく、政治家がお忍びで訪れるような、そんなちょっとした料亭を思い浮かべてしまった。その料亭でなんてことない普通の女性と一緒に食事をする。ただ、それだけ。そこで感じる様々な思いを、作者独特の語り口で幻想的な雰囲気へといざなってくれる。どうやったらこんな思考状態に陥るのか、作者の頭の中を見てみたい。それほど一般人はあまり想像しないようなことを、本作は描いている。かなり特殊といえるだろう。

別に特別なオチがあるわけでもなければ、ミステリーでもない。ただの日常を描いているといえばそうなのだろう。取り留めの無い日常だが、どこか歯車が狂ったような、微妙なずれを感じるあたり、もしかしたら村上春樹に近いのかもしれない。ただし、文体は徹底的に異なっており、現実的でリアリスティックなのは作者の特徴だろう。元大学助教授という肩書きから、その時の思いが強く作品にでてきてはいあるが、大学に対する不平不満というものを登場人物が語っているのも特徴だろう。

少し変わった子がいる店に足しげく通う男が一番変わっている。ある種のマニアックな性癖を突き詰めると本作の境地に到達するのだろうか。ちょっとした放置プレイに通じるような究極のプレイなのかもしれない。作品自体にはそのような雰囲気をまったく感じさせないが、普通の人では到達できない極地ではある。大学に対する思いと同様、作者のマニアックな考え方が本作には反映されているのだろうか。

特殊であることには変わりないが、しかし嫌悪感を覚えることはない。淡々と読んでいくうちにいつの間にかその世界に片足を突っ込んでいた。なんて気分なのかもしれない。



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