沈まぬ太陽2 アフリカ篇下


2006.8.12 アフリカでの過酷な生活 【沈まぬ太陽2 アフリカ篇下】

                     
■ヒトコト感想
前回の激しい会社側との戦い。組合員の待遇改善のため信念を変えずに戦い続けた。それに比べると今回は会社との戦いというよりもアフリカという過酷な地での生活と文化の違う異国での仕事の難しさを表している。煮えたぎるような激しい怒りや憤り、会社に対するやるせない気持ちなど前回ほど感じることができない代わりに今回はアフリカでの生活の難しさを感じると共に、どこかのんびりとした召使い付きの優雅な生活のようにも感じてしまった。辛い環境というのは分かるが、どうしても召使い付きの豪邸に住むというイメージはセレブな暮らしに思えてならなかった。

■ストーリー

パキスタン駐在を終えた恩地を待ち受けていたのは、さらなる報復人事だった。イラン、そして路線の就航もないケニアへの赴任。会社は帰国をちらつかせ、降伏を迫る一方で、露骨な差別人事により組合の分断を図っていた。共に闘った同期の友の裏切り。そして、家族との別離―。焦燥感と孤独とが、恩地をしだいに追いつめていく。そんな折、国民航空の旅客機が連続事故を起こす…。

■感想
強力な権力との激しい戦いはない代わりに、アフリカの生活の過酷さとのんびりとした雰囲気を感じてしまった。本来対抗するはずの上層部と遠く離れたアフリカということで直接的な戦いはほとんどない。しかし島流しの刑にあっても組合の仲間のことを見捨てずに会社に対抗する姿勢。それはすばらしいとは思うが、その為に犠牲になっている家族の気持ちを思うとやるせなくなる。特に子供の気持ちを考えると・・。

僻地での勤務と、もう一つ本作のメインとなるのが航空機事故である。立て続けに起きるあたりはこの巻のテンションが一番上がる部分で、事故の原因究明のために綿密な調査と、どうにかして会社には非がないという流れにしようとする上層部の人間達。おそらくこれは今後の複線なのだろうが、一番読んでいて興奮した場面でもある。

もう1つ今後に大きな影響がありそうなことは、僻地暮らしが長くなり、恩地がアフリカの地でハンティングに明け暮れだんだんと心がすさんだような記述がある。これによって人間性がどのように変わり、その後日本に戻ってからどのような展開になるのか。権威に負けない正義の男を貫くのか、それとも血も涙もないような
冷酷非道で荒々しく上層部を糾弾するようになるのか。新たな展開への布石は十分にしかれている。

ある意味今回は日本に戻り激しい戦いを繰り広げるまでの繋ぎなのかもしれない。日本へ向かう恩地の性格的な変化をもたらしたアフリカでの生活がメインの作品だ。

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