獅子の門 玄武編 


2007.12.5 圧倒的な存在感 【獅子の門 玄武編】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
本作はなんといっても久我重明だろう。圧倒的な強さと残虐性を持ち合わせ、素手だけでなく、暗器までも使いこなす。本シリーズの主役の一人である志村礼二が叩きのめされ、その後弟子入りする。正の羽柴彦六に対して、負の久我重明。この二人の代理戦争のごとく、弟子たちが戦いをくりひろげるのだろうか。それ以外にも、芥菊千代や竹智完。そして、最も印象に残っているのは、室戸武志だろう。徹底したトレーニングで作り上げられた体は、まったく格闘技に対して耐性がない。少しずつ周りの影響を受けながら変貌していく様をじっくりと読むのは楽しみだ。

■ストーリー

漂泊の武道家・羽柴彦六はふらりと東京に戻り、空手道場・武林館を訪れた。館長の赤石文三は年来の友。松本での愛弟子・加倉文平もいた。一方、加倉に完敗を喫し、その強さに嫉妬する志村礼二は酒と暴力で巷を彷徨するなか、久我重明と名のる男にたたきのめされた。その久我は、自らの師・萩尾老山と兄の伊吉を斃した羽柴の行方を捜し求めていたのだ…。

■感想
本シリーズには特別な人物を除いて、主役候補が5人いる。その中でも作者の力の入れ具合にだんだんとばらつきが出はじめ、最終的には一人に絞られるのだろう。前作ではほぼ平等な扱いを受けていたようだが、本作からは明らかに好き嫌いがはっきりしてきた。芥菊千代と室戸武志。特に室戸武志の方は、プロレスラーの強さをアピールするかのように、体はでかく、ショー的なことをやってはいるが、本当は強いのだと主張している。プロレスラーが弱いと風潮するな、という言葉があちこちから出てきたのもそのせいだろう。

まだまだ荒削りで、まったくその強さを見せていない少年たち。それらが、それぞれの師匠のもと、どのように強くなるのか。そして、羽柴彦六と久我重明は戦うことがあるのか。楽しみは尽きることがない。ただ、それぞれの少年たちが重なる部分が少ないために、物語がぷっつりと途切れるという印象はぬぐえない。これから盛り上がるというところで、場面がかわり、まったく違った物語が始まる。わかっていることだが、先が気になってしょうがない。

ある程度パターン化した流れと、連載時の影響なのだろうか、毎回、今までの流れの簡単な説明が入る。文庫化され、シリーズを続けて読んでいる者にとっては冗長でしかない。漫画的流れを踏襲しているので、過去の出来事を知っていることが前提なのはよくわかる。いきなり本作を読めば、その面白さをまったく理解できないということは当然なことだ。

まず、なにわともあれ、本作には久我重明というとてつもない個性を持った登場人物がでてくる。今後、どのような絡みを見せるのか、とても楽しみだ。

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