深夜特急2 


2007.5.4 無性に旅に出たくなる 【深夜特急2】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
前作が旅の序章であるなら、本作は本格的な旅の始まりであり、地元民とのふれあいの回なのだろう。目的のない旅になんだか力強さを感じなかった前作と比べて、本作はその目的の無さが良いように感じてしまう。何も考えずに貧乏旅行に専念する。言葉の壁や文化の違いなどまったく気にすることはない。本作を見ると間違いなく旅に出たくなる。それも計画なしの無謀な旅に。現地の人々の優しさや暖かさを感じ、そして旅先で同じような旅人に出会う。いつか自分もそんな旅に出発してみせるという気持ちは読んでいる間中ずっと持っていた。本作がバックパッカーに与えた影響の大きさを改めて感じた。

■ストーリー

香港・マカオに別れを告げ、バンコクへと飛んだものの、どこをどう歩いても、バンコクの街も人々も、なぜか自分の中に響いてこない。〈私〉は香港で感じた熱気の再現を期待しながら、鉄道でマレー半島を南下し、一路シンガポールへと向かった。途中、ペナンで娼婦の館に滞在し、女たちの屈託のない陽気さに巻き込まれたり、シンガポールの街をぶらつくうちに、〈私〉はやっと気がついた。

■感想
前作ではそれほど感じなかった街の人々の優しさを本作では感じることができる。ぼったくろうとする人々はもちろん存在するが、それ以上に貧乏旅行をする旅人に対して街の人々がやさしく向かい入れ、食事をご馳走し親切に街を案内する。今まででは旅先では絶対に危険なことが待っているので油断してはならない。油断すればたちまち身包みはがされてしまうという思いがあった。しかし、それを根底から覆すように、現地の人々の無償のやさしさを感じることができる。

バンコク、シンガポールにカルカッタ。まずは宿を決めるための交渉。そしてコーラ一つ飲むのにも交渉。日本円で考えると大した違いがないが、現地の価値で考えると大きな違いなのだろう。執拗なまでに値段交渉する<私>に旅なれたベテランの極意のようなものを感じた。そうかと思えば善意の行為に対してあらぬ疑いをかけたりと勝手な先入観をもつ日本人がする当然の行動をとっている。

本作では旅に対する意味というものも<私>は深く考えている。なんのために旅をするのかなどと考えてはいけない。そして、日本に帰ったら何をするのかなんてことも考えてはいけない。当然今の自分で考えると、そのような行動を取ることはできない。なぜか?結局は自分が守りに入っているからだ。本作の<私>のように、行こうと思えば明日にでも全てをなげうって旅に出発することはできる。しかしそれをやる勇気がない。自分のできないことをあっさりと実行しているのをうらやましく読むのが今の自分にできる精一杯の慰めなのだろう。

本作を読むとかなりの割合で旅にでたくなるはずだ。

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