ジゴクラク 


2006.11.18 賭博やめますか?それとも・・ 【ジゴクラク】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
賭博の世界は常人には想像できない世界だと良く言われている。本作を読むとまさにそれが作品からにじみ出ている。最初は到底理解できない世界であっても、読み進めるうちにその世界にどっぷりとはまり込み、いつの間にか登場人物と同じようにカードを裏返す瞬間、手に汗握ってしまう。既にカードが配られた時点で結果は決まっているはずなのに、それを裏返す瞬間まで、まるで結果が変わるかのような気合の入れよう。賭博という熱くそして恐ろしい世界を体験することができる。

■ストーリー

赤坂の非合法賭場。博奕を生業とする「わたし」は、バカラの魔力に取り憑かれた美少女、舞ちゃんと知り合う。毎夜十万円を溶かし続けた少女の負けは、一千万円に達した。少女を「喰い」まくったのは「わたし」だったのだ。舞ちゃんの体を張った願いから、二人は共同戦線を張ることになる。乾坤一擲の大勝負が始まった―。賭博の真髄を突く警句の数々。史上最強のギャンブル小説。

■感想
バカラというほぼ50%の確率の賭博でさえ、そこには何か目に見えない神のいたずらのようなものを感じてしまう。賭ける金額が大きすぎて感覚が麻痺してしまうのと同様に、カードを配られた瞬間には決まっているはずの結果も裏返す者の気合、もしくは周りの勢いによってはそのカードの内容さえ変えてしまう。そんな状況を普通に受け入れられるのはバカラ賭博にはまった人間か、本作を真剣に読み込んだ人間だけだろう。

素人考えではバカラという単純に考えると50%の確率のものは、当たったり外れたりが繰り返す運だけが支配する賭博だと思う。しかし実際には落ち目の人物の逆張りをすることによりその勝率を飛躍的に高める。科学的な根拠は一切ないのだが、それがさも当然のように描かれている。多少心理的な何かがあるにしても、自分はただカードをめくるだけなのに、落ち目の人間はどこまでも落ちていく。そしてそれを食い物にする人々。賭博というものの価値観を一気に覆された作品だ。

バカラというと店との戦いのはずが、いつの間にか人間同士の戦いになっている。どちらに賭けるか、店は眼中になくそこにはただ相手と逆張りし、その結果相手が没落するのを目的とする。本来ならば的中した場合に店から貰う報酬を、相手から奪うという考え方。そこは既に賭博狂い独特の考え方なのだろう。

ここまで熱いギャンブル小説を見たことがない。まさに人間同士の戦いといっても過言ではない。



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