四季 冬 森博嗣


2006.5.3 未完成なパズルが完成 【四季 冬】

                     
■ヒトコト感想
女王の百年密室。これを最初に読んだ時、なんとなくすべてがFになるとリンクする部分があるなという思いがあった。しかし作中にそれらしい記述もなく、作者が同じなだけに似ているのかと思っていたが・・・、やはりリンクしていたようだ。後付けかもしれないが、未完成のパズルが完成したような気分だ。本作は女王の百年密室を読んでいることが前提であり、哲学的な作品だ。

■ストーリー

天才科学者真賀田四季の孤独。両親殺害、妃真加島の事件、失踪、そしてその後の軌跡。彼女から見れば、止まっているに等しい人間の時間。誰にも理解されることなく、誰の理解を求めることもなく生きてきた、超絶した孤高の存在。彼女の心の奥底に潜んでいたものは何か…

■感想
完成された天才というものが身近にいるわけではないので良くわからない。しかし、本作を読むことで、実際はわからないが、もしかしたら天才は普段こんなことを考えているのかもしれないという気分にさせてくれる。本作をあっさりと理解できれば、もしかしたら天才の要素があるのかも。

しかし、理解するのは生半可なことではない。四季シリーズをすべて読んでいても、本作の敷居は高い。人間とは何か、生きるとは何か。そんな問いかけがあちこちに散らばっており、天才の頭の中を垣間見たような気分になる。全編通して非常に哲学的であり、肝心なミステリー部分もぼやかしているので読み慣れていないと、結局なんだったのかわけがわからなくなる可能性がある。

おそらく、女王の百年密室を読んでいないと肝心な部分はほとんど理解できないだろう。今までのシリーズとはかけ離れた作品なので、読んでいない人が多いのかもしれない。読んでいない場合は物語の確信部分である四季の生活や子孫の話が意味不明になってしまう。結論がぼやかして書かれているせいもあるが。

本作でおそらく四季に関する物語はいちおうの終焉を迎えるのだろう。森作品の象徴的な作品だっただけに残念ではあるが、作者は読者が驚くような新たなキャラクターを生み出してくれるだろう。



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