龍時01-02 


2006.10.17 すっきりとするサッカー小説 【龍時01-02】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
サッカー小説として思い出すのは悪魔のパス天使のゴールだろう。悪魔の~は試合をリアルに描写し、一人の主人公というよりはサッカーの試合そのものにスポットを当てたもので、サッカーを知らない人には読んでいて辛い作品となっていた。その分ある程度サッカーを知っている人ならば頭の中で試合の情景をイメージできるだろう。それに比べると本作はよりエンターティメント化されており、一人の少年の成長物語といっても良い。分かりやすいサクセスストーリーと見ることもでき、どこか映画のGOALに近いものも感じた。一人の少年が困難に立ち向かいながらスペインで活躍するまでを描いている。サッカーファンならば確実に楽しむことができ、それ以外の人にも非常に理解しやすくなっている。

■ストーリー

2001年初夏、日韓A代表戦の前座として国立競技場で、スペインU‐17との親善試合が組まれた。監督の抜擢で急遽試合に呼ばれた無名の高校生、志野リュウジは後半アグレッシブなゴールを決めるが、敗退。世界との壁に愕然とする。「ここ(日本)にいたんじゃ駄目だ」。試合後、練習にも身の入らなかったリュウジのもとに、スペインのユース育成担当からの連絡が入る…。家族との葛藤、友情、淡き恋、そして国籍問題、悩み多き16歳のサッカー少年の成長を描くシリーズ第1弾。

■感想
日本代表がドイツW杯でパッとしなかった鬱憤をはらすような小説を読みたかった。恐らくこの龍時シリーズを最後まで読むとその鬱憤も晴らされることだろう。龍時という少年のサッカーに対する気持ち、そしてその家族達。物語はある程度お決まりのように、苦難や苦境に陥りながら最後には成功する。典型的なサクセスストーリーなのかもしれない。わかりきっているのだが、一つ一つに感動してしまう。

サッカー小説というと、どのようにしてリアルな試合描写をするか、そればかりにポイントがおかれているような気がするが、僕自身はそのことよりも全体の構成と主人公の魅力さえあれば本作のようにすばらしい作品になるのだと思う。龍時のサッカーに対するひたむきな気持ち、そしてそれを取り巻く仲間たち。下克上的にのし上がって行く姿を見ると、まるっきりフィクションのはずなのにいつの間にか将来の
日本代表に龍司が登場してくるはずだという、そんな錯覚さえ覚えてしまう

コアなサッカーファンだけでなく、W杯シーズンになると日本代表のファンになる、にわかサッカーファンでも十分面白さを味わえる作品だ。にわかだけでなく、コアなサッカーファンでも楽しめるようなマニアックな部分も含まれており、スペインというサッカー大国で成功することの難しさを知ることができる。そしてそれにチャレンジする龍時に対して、次第に応援する気持ちが強くなってくる。

結末がどうなるのか、又はキッチリと完結しているのかこれかシリーズを読んで明らかになるのだろうが、読みやすさと癖のない文章で、小説としてはマニアックなサッカーを題材としているが、非常に間口の広い作品だと思う。

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