恋愛時代 上 


2007.2.7 ツンデレを先取り 【恋愛時代 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
同じ作者ということでどうしても恋人よと比較してしまう。上巻から不幸になりそうなオーラがプンプンしていた恋人よに比べ、本作は明らかに最後に二人は元鞘に納まるのではないかと予想できる流れだ。二人の男女の視点からお互いのことを牽制しあい、そして思いとは逆方向へ突っ走ってしまう。なんだか上質のコメディを読んでいるようで楽しい気分になってくる。もしかしたら本作は、今流行のツンデレをこの頃すでに先取りしていたのかもしれない。

■ストーリー

早勢理一郎と衛藤はるはもと夫婦。離婚した後も何かと理由をつけてはよく会っているおかしな関係だ。ある日、話題は再婚のことに。「早く結婚しろよ」「あなたこそ!」意地っ張りな二人は、自分の手で互いの結婚相手を探し出すと言ってしまう。しかしそれがとんだ展開になって…。

■感想
恋愛モノの定番として意地の張り合いがある。お互いに好きだけど、それを素直に相手に言うことができない。いつも憎まれ口をたたき合いながら心では相手のことを思っている。そんな使い古された状況を本作はあつかっているのだが、そのバックグラウンドが普通とは違うので、そこで差別化がはかられている。離婚した夫婦が中学生のような恋愛をする。そのシチュエーションはありえないと思うが、なぜか楽しめる。

お互いが交互に自分の目線で語っている。その語り口がユーモアに溢れており、会話の端々に見え隠れする相手を思う気持ち。読者はすべてをわかっており、二人の逆走ぶりにヤキモキする。このくっつきそうでくっつかない、お互い微妙な関係が楽しめるのは中学生までかと思っていたがこの年代の物語としても十分成立することがわかった。

恋愛モノとして、ドロドロしていたり、しんみりするようなことはない。主人公二人の性格が外向きには明るい性格なので、物語のトーン自体もそれに引っ張られるように明るくなっている。お互いがお互いに新しい相手を紹介しあう場面などは、ありえないと思いながらも、作品の雰囲気にのまれてしまう。もしかしたらそれもあるかもしれないと思えてくるから不思議だ。

恋人よでは不幸が足音を忍ばせながらやってくるのを感じたが、本作の下巻ではなんだかすべてがうまくいきそうな気がした。

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