プリズンホテル2 秋 


 2008.5.17  宿命の対決 【プリズンホテル2 秋】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ヤクザが経営する通称監獄ホテルに警察の団体様が訪れる。荒唐無稽な設定は今までどおりであり、ヤクザ、警察、大御所歌手、売れない元アイドル歌手、そして、学者風な謎の男。前作よりもドタバタ感は少ない。しかし、ヤクザ対警察というのは宿命的な敵対関係のはずだが、ここにくれば、なぜか最後には分かりあえることになる。本作のキーマンである謎の学者風の男がイマイチ存在感にかけている。このエピソードに感動できなければ、本作の全てがなんだかぼんやりとしたものに感じてしまう。前作よりも感動を前面に押し出しているあたりも、ちょっと鼻につくのかもしれない。

■ストーリー

花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが「プリズンホテル」へ投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察の酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。

■感想
前作にも増してバラエティにとんだ宿泊メンバーだ。任侠団体に警察の慰安旅行団体。この二組が一つのホテルに宿泊するとなると、一体どんなドタバタが繰り広げられるのか。この部分がメインかと思いきや意外なほどあっさりと簡単に済まされている。ヤクザが経営するホテルに警察が泊まるというのも変な話だが。そこは礼儀だけはしっかりしている任侠団体だけに、客は客としてしっかりともてなそうとする。ヤクザと警察の憎しみ合いのようなものはほとんど感じず、昔なじみの戦友を懐かしむように語り合っている。

このシリーズの主役のような位置づけである小説家は、前作にも増して悪意のある行動をとっている。これが幼児期のトラウマの裏返しであったり、寂しさゆえの行動だと読み取ることもできるが、単純に性格的な問題と強く感じてしまった。ギャグ的なもので誤魔化しがきいた前作と比べると、ちょっとお涙頂戴な物語で全てをチャラにしようとするのは難しかった。個性的なキャラクターの中で埋没しないためにも、何か特徴をつけるとしたら、本作のようにありえないような性悪にするしかなかったのだろうか。

前作と比べて、さらに血なまぐさい部分はなくなり、本作のキーマンである集金詐欺師がどうにもインパクトにかける。たった一人でプリズンホテルに泊まった客が、ヤクザや警察を含め、どのように引っ掻き回すか、それによって本作のテンションが変わってくると理解していたが…。思いのほかあっさりと、そしてすんなり収まるところに収まったような感じだ。主要キャラクターたちの過去が暴かれ、知らなくても良いことまで知ってしまった人々。プリズンホテルに泊まるキャラクターによってその面白さはずいぶん変わってくるものだと思った。

今後、あと2作続くことになるこのシリーズ。小説家の性格はよくなるのだろうか、そして、母親とは和解するのだろうか。シリーズとしての見所はそんなところだろうか。

 3巻 冬へ



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